「俺はアンバー。好きに呼んでいいよ。
君の名前は?」

「私、は・・・サファイアです」

ガラントの村を飛び出した2人は、道中で言葉を交わす。

「へえ。綺麗な名前。でも長いな。
えーっと・・・じゃあ“サフィ”なんてどう?」

「さ、さふぃ?」

「あだ名!」

アンバーと名乗る青年はにこやかに笑った。
とはいっても、長い前髪に隠れて目元が窺えない。
棺の中にいた時は乱れた髪かと思っていたが、あえて彼はそうしているようだ。

生まれて初めてあだ名を貰ったサファイア――“サフィ”は、思わず微笑んだ。
どうしてだろう。笑みが止まらない。

「俺、死んだはずだけど、なんか生きてるっぽいね?
でもおかしいなー。全然寒くないし、こうやって抓っても痛くない」

自分の腕を摘まみながらアンバーは首を傾げている。
微笑んでいたサフィは急に神妙な顔に戻る。

――また、やってしまった・・・?



「ま、いっか!
これなら何も怖くないし!」

カラリとした前向きな言葉で、彼は笑った。

「サフィ、寒いでしょ?
この先で休もうよ。君の事を聞かせて!」

雪道を行き、辿り着いたところは聖都に次ぐ大きな街として有名なクルトという街だ。





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