数年後、その猫は病気にかかって死んでしまう。
姉妹は悲しみに沈み、とりわけ一番甲斐甲斐しく猫の世話をしていたサファイアは目も当てられないほど悲嘆に暮れて泣き腫らしていた。
さすがの両親もすっかり滅入ってしまった子供達をいつまでも見ているのは心苦しく、猫を屋敷の庭に埋葬する事を勧めた。



ガーネットが穴を掘っている間、サファイアはずっと猫の亡骸を抱きしめている。
深い穴の底に猫を横たえようとした時、手放せなかったサファイアは泣き叫ぶ。

――どうか、どうか、今すぐ戻ってきて。

――楽しい日々を、もう一度・・・

その嘆きは彼女を救うのか、それとも。
突然眩い光に体を包み込まれた妹を見て、ガーネットは目を眩ませる。
一体、何が起きるのか――・・・





その光が引いた後。サファイアの腕の中にいた猫が目を開けていた。
まるで昼寝から覚めたとでもいうように、呑気に欠伸をしている。
奇跡が起きた。死んでなどいなかったんだ!と姉妹は喜び、掘った穴の始末も忘れて、猫を抱えて屋敷の中へ戻る。

今し方起きた奇跡を、姉妹は興奮気味に両親に話す。
・・・が、両親は目を点にした後、顔面蒼白となって生き返った猫をひったくる。

身体が冷たい。鼓動がない。
なのに猫は“生きている”。

母は尋ねる。どちらが猫を蘇らせたのかと。
何も知らない姉妹は答える。それはサファイアだと。

「すぐに猫を埋めて来なさい、ガーネット!!」

訳が分からないといった顔をするガーネットに猫を突き渡し、母はサファイアの手を強引に引っ張る。
ここまで狼狽し、力任せの手段に出る母を見た事がない。
猫を抱えたガーネットを残し、両親はサファイアをぐいぐい引っ張りながらその部屋から出ていく。

-04-


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