双子姉妹の日常に変化が訪れたのは、ある夕立の日だった。
ガーネットに連れられて屋敷の近所まで遊びに出ていたサファイア。
夕刻から雨が降り始め、姉妹は急いで帰ろうと、慌てて道を走っていた。
その道中で、ずぶ濡れでうずくまる小さな子猫を見つけたのだ。
どうやら捨て猫らしい。
思わず立ち止まった姉妹は、今にも倒れそうに衰弱したその子猫に近づく。
抱き上げると、か細い鳴き声を上げた。
この手で触れてしまったら、もう冷たい路上に戻す事などできない。
2人はその子猫を屋敷に連れ帰る事にした。
もちろん、母親には反対される。母は動物が嫌いなのだ。
完璧主義の母にとって、思うように行動しない動物というものが許せないらしい。
とはいえ、ここぞとばかりに弱いものを見捨てる気か!と覚えたての聖書の教えで噛み付くガーネットと、珍しく頑固に子猫を手放そうとしないサファイアに母は気圧される。
そこに父の気紛れな「まぁいいんじゃないか」という助け舟が加わり、ようやく折れた母は双子の一層の努力を条件に子猫の飼育を認めた。
子猫は姉妹の部屋で飼われる事になり、あれだけ自分勝手に遊びまわっていたガーネットも、妹と子猫に矛先が向かないようにそれなりに勉学に励むようになる。
姉妹の健気な世話で子猫はみるみるうちに健やかに成長し、艶やかな白毛の猫へと変貌した。
教養を深める時間以外は猫と過ごす日々が続き、姉妹は幸せそうにいつも笑っていた。
――その猫自体が、双子の運命を狂わす事になるとは知らずに。
-03-
≪Back
|
Next≫
[Top]
Copyright (C) Hikaze All Rights Reserved