ところが困ったことに、双子の姉が少々手の焼ける娘であった。
いくら厳しく注意しても、ガーネットはまるで少年のように走り回る事が好きで、聖書よりも木の枝を振り回して遊ぶのが好みのようだ。
対なすように引っ込み思案なサファイアは、それこそ両親の望み通り、令嬢として上品な教養を身に付けていく。
双子なのにどうしてここまで性格が違うのか、と屋敷の誰もが嘆いていたが、ガーネット自身は何処吹く風といった様子だ。
当時は、当主に相応しく育つのはサファイアだろうと予測していた。
性格は正反対だが、さすが双子というべきか、姉妹はお互いを半身のように思いやる。
お転婆なガーネットが擦り傷を作れば、サファイアは勉強したての癒しの力で治療する。
母親からの期待感に息が詰まりそうなサファイアを、ガーネットはこっそりと遊びに連れ出す。
ごく一般的な家に生まれていたら、心底幸せな姉妹だっただろう。
甘やかす事を禁じて手厳しく教育を施していた両親も、双子が手を繋いでぐっすりと眠る顔を見ると何もかも許してしまうほどだった。
屋敷では時折他の貴族を招いてパーティーを行うのだが、動きづらいドレスを着せられるのがガーネットにとっては何よりも嫌いな事。
未来の伴侶が招かれているかもしれない重要な宴の真っ最中に、こっそりと抜け出しては使用人に捕まえられるのが恒例だった。
それでもまだまだ幼いうちからこの双子への求婚は相次ぎ、陰で双子のどちらが当主を継ぐのかひそひそと話題になっていた。
「ガーネットお嬢様はもう少し麗しく振る舞われる事を・・・」
世話役のぼやきも空しく、今日も今日とてガーネットはせっかくの白く美しい肌に無数の傷と泥汚れをくっつけて天真爛漫に笑っていた。
-02-
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