アガーテがヴィオルの愛を拒絶した事で、ヴィオルは荒れていた。
その様子を伺うティルバの姿。
「事情はわかった。ロート、君が望むというのならば、手を貸そう。
なんせ君は今まで何度も私を守ってくれた恩人だからね。
あの兄上に目に物を見せてやろうじゃないか」
さながらイタズラでも閃いたようなティルバの瞳。
メノウを唯一愛称で呼ぶ彼女は、ようやく光を見た彼の背を押す事を躊躇わない。
「ただまぁ、結局は私も王女の範疇に過ぎない。
君とアガーテが旅立つ扉は開いてやれるかもしれないが、その先の道まで守ってやるのは厳しいだろう。
どうだい、ロート。走り抜けそうかい?」
「あぁ。もう慣れてる」
「はっはっは!
そこまで言うのなら、何も心配はしないよ。
さ、準備を済ませてくると良い。
あと1人、真実を知る権利がある男がいるのを忘れずにな」
ティルバの協力を得たその足で、メノウはゼノイのもとへと向かう。
ティルバの付き人として立派に成長したゼノイは、これからメノウがしようとしている事に最大限の祝福を送る。
「隊長ならきっと大丈夫、です。
隊長の分も、俺が頑張ります」
表情を作る事は苦手なゼノイだが、恩人を安心させようと、ぎこちなくも笑顔を作る。
「もう二度と会えないかもしれないけれど・・・。
隊長は、いつまでも、俺の目標、です」
「・・・そんな立派なもんちゃうて。
でもまぁ、おおきにな。
ティルバの事、頼んだ」
時間にしたら短い別れだ。
それでも、悔いなく背を向ける。
もはや一刻の猶予もない。
日が沈み始めた外の空を見つめ、メノウは主のもとへと戻る。
-11-
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