闘技者となったとはいえ、今まで石を運んでいただけの少年達だ。
試合前にいくつかの武器を見せられ、自由に選んで勝負に挑む事ができるのだが、戦った経験などない兄弟はきょとんとする。
無難そうな武器として剣を手に取り、その感触を確かめる。



試合の待ち時間は、すぐそこで行われている殺し合いをまざまざと見せつけられる。
落ち着かない素振りのヒスイは意味もなく武器を持ったり置いたり、はたまたゴクゴクと水を飲む。

「お前飲み過ぎとちゃうか」

「な、なんで兄貴そんな落ち着いてられんねん?!
こちとら熱いし、フラフラしてくるし、水でも飲んでなきゃやってられんわ!」

一試合が終わって歓声が上がるのが聞こえてくると、ヒスイはチラチラと自分の腕を見る。
番号が書かれた銀のプレートと、会場に示される次の闘技者の番号を交互に確認しては安堵している。

2,3試合の後、ついにヒスイの番号が示された。

「ううっ・・・」

「どうした」

目に見えて弟の手足が震えている。
緊張しているのだろう・・・――そうとしか思えない。

「兄貴、ワイ、なんかおかしいかも」

「深呼吸せぇ。大丈夫や。ギタギタにしてこい」

「・・・――っ!! わかった」

よろめきながら会場へと歩いていく後ろ姿。

「・・・ヒスイ!」

この時ようやく、“何かがおかしい”とメノウは気が付いたのだった。

-04-


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