散財を止めさせようと父に立ち向かったラリマーだが、酒を呷っていた彼は娘の容姿をまじまじと見直し、にんまりと笑う。
そのままの勢いで見知らぬ場所へ連れて行かれたラリマーは、その後絶望に落ちる。
妻や子供に隠して膨大な借金をしていた男は、なんとその対価として、義理とはいえ自らの娘である彼女をまるごと売ったのだ。
母譲りで器量良しのラリマーは、そこそこいい値段がついたらしい。
彼女は何が何だかわからないうちに暗くて狭い部屋に閉じ込められ、そして意気揚々と大金の袋を担いでいった父は二度と振り返ってはくれなかった。
その日のうちに、彼女は汚されてしまった。訳もわからないまま乱雑に、されるがままに。
まだ幼い少女であった彼女に抵抗する手段などなく、そんな地獄の日々が数年間続いたのであった。
あの日父を糾弾しようとしたのは間違いだったのか、愛する母と弟妹達は無事なのか、ただそれを心に抱きながら、彼女は見知らぬ男達の餌食になっていた。
見栄えを維持するためか最低限の食事にはありつける程度の環境ではあったが、夜な夜な行われる行為を思うと恐怖で何も喉を通らなかった。
暗い部屋に光が差し込んだのは、すべてが狂ったその日から数年後の事。
すっかり人形に徹していたラリマーは、その時差し伸べられた手を取る事さえも拒んでいた。
彼女が押し込められていたのは悪質な人身売買の場であり、別の部屋にも彼女と似たような年齢の少女達が囚われていた。
彼女達で快楽を貪っていた連中は全員拘束され、不幸な少女達は数年ぶりに外の世界へと連れ出された。
やがて自分達を救ったのは白の国の傭兵ギルドから派遣された傭兵部隊だったと知り、そのままギルドに保護された後に各々の人生をやり直し始める。
ラリマーは真っ先に母と弟妹達の無事を確認し、数年ぶりに家に帰り、泣き崩れる母と抱きしめあった。
父はごく数か月前に借金取りにその生命ごと根こそぎ取られてこの世から去ったと聞かされ、安心したような、それでいてやり場のない恨みを持て余す。
数年の間に母はすっかり老け込み、今は家政婦とは名ばかりの奴隷となっていた。
身体のあちこちを壊すほどこき使われ、スズメの涙のような賃金を受け取って子供達を食わせていたのだ。
ラリマーはその時決意する。
――私も傭兵になる、と。
-03-
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