実家から青の国の学び舎へ放り込まれ、緑の国の大貴族の次期当主として召喚術を学ばされていたグレンは、成績こそ非の打ちどころがない様だったが、それ以外の私生活は堕落しきっていた。
まだ成人もしきらない内に酒とギャンブルに傾倒し、ついには女にまで手を伸ばす。
そんな彼が何故主席で卒業したのかは世界七不思議と言ってもいいほどだが、本人曰く、成績が良いほど寄ってくる女の質が上がるから、とのこと。
どこまで不純な動機で学んでいたのかと当時の担任は呆れるが、非凡な才能を持っているのは誰から見ても確かだった。

学内の女性は生徒だろうと教授だろうと構わず手を付け、売られた喧嘩は喜んで買う。
彼には妹がおり、彼女も学び舎を同じくしていたが、やはり似たような学生時代を過ごしている。
緑の国でも双翼とされるアルカディア家で生まれたこの兄妹は、学校へ入る前は誰もが目を細める優良児だったという。
厳格で知られたアルカディア家当主の父親の目から離れ、生まれた頃から溜まっていた鬱屈した感情が捻じ曲がって発散されてしまったのだろう。
ほとほと困り果てていた教授達も、まだ幼いこの兄妹の出自を知るとだんまりだった。



学内では最上級のクラスである博士課程を終え、いよいよ実家に戻って当主の後継となる・・・はずが、グレンは家に帰る事を拒否した。
それを聞いた当主の父が学校まで半狂乱で乗り込んで来た事もあるが、肝心のグレンはこの学校でしっかり学んだ召喚術を応用した転移魔法で逃げ回る。
青の国の魔法学校は主に富裕層が通う学び舎であり、実家との揉み合いでトラブルが起こるのは日常茶飯事。
とはいえこのグレンと実家の有様は、何年も先の未来でも学長が酒の席でよく話題にする十八番となってしまうほどだった。

結局実家には戻らず就職の道を選んだグレンだが、その類稀な才能を欲するところはいくらでもあったというのに、まるで興味もない様子。
最終的には、当時の友人であった別の専攻の首席と同じ道に進む事となる。
そこは黒の国にある、世界でも最大の医療機関だった。



しかしながら、大した動機もないまま進んだ機関はグレンにとっては欠伸が出るほど退屈だったらしく、数年ともたずに去ってしまった。
一応はその手腕を発揮しており、機関側にも引き留められたものの、「つまらない」の一言でさっさと出て行ってしまった彼にかける言葉も見つからない。
次に彼を呼び寄せたのは、白の国の魔法学校だ。
白の国の魔法学校は、青の国ほどではないがその実績は折り紙つきで、数多くの優秀な術士を輩出している学校だ。
そんな場所が、あろうことか、あのグレンを教授として招いたのである。

元々話術が巧妙で、それこそ悪魔の様だと恐れられていたグレンに教授の仕事は合っていたらしく、懐く生徒も多かった。
あわや教育者が女子生徒と夜の街に、などといったスキャンダルも学長が必死に揉み消し、それなりに充実した日々を彼は送っていた。

そんな彼に人並みの転機が訪れたのは幸か不幸か。
後に彼の最初にして最後の伴侶となる女性との出会いが待ち受けていたのである。


-02-


≪Back | Next≫


[Top]




Copyright (C) Hikaze All Rights Reserved