「ほえ~・・・」
大きな校舎。賑やかな校内。
大きな鞄を抱えて立つハイネは、呆気にとられていた。
「はい、ここが“カレイドヴルフ国立魔法学校”。名門中の名門、世界一の学校よ!
ハイネちゃん、試験よく頑張ったわね! きっとお父さんも喜んでるわよ。
今日からあなたはここの生徒! たっぷり勉強してね」
憧れの世界が目の前に広がっている。
高鳴る胸を落ち着かせようと手を当てていると、奥から男性が1人歩いてきた。
「貴女が“ハイネ・リプカ・アードリガー”さんですかぃ?
初めまして、錬金術“教授”のアンリ・シュタインと申します。
明日から、貴女が編入する初等科錬金術専攻クラスの担任を務めます」
「あ、う、はじめまして!!」
ぎこちなくハイネは頭を下げる。
「そちらの女性は保護者の方で?」
「そう。ハイネちゃんの後見人のラリマー・フリーデ。
実親ではないのだけれど、書類一式は私の名義だから、この子に何かあったら私を呼んでちょうだい」
「わかりました。ではまず寮へご案内します。
荷物を置きましたら、学長にご挨拶をお願いします」
「はい!!」
元気のいい返事に、アンリは微笑む。
魔法学校の生徒にあてがわれる寮が並ぶ棟へと案内され、一室の扉の前に立つ。
女子生徒が2人、そこで待っていた。
「ようこそ、ハイネさん。
ふふ、覚えてますか、ボクのこと?」
「わぁ、カイヤお姉ちゃんや!! 会いたかったわぁ!!」
「ここでまた会えて光栄ですよ。
で、こちらが・・・」
「わたくしはマオリ・ヴィルベル・オリゾンテ。寮長をしている者ですわ。
清く正しく美しく!!・・・生活していただいて、思う存分学んでくださいまし。
学校生活に何か問題があれば、わたくしにどうぞ遠慮なくご相談くださいな」
「はい! よろしくお願いします!」
さて、とアンリが声をかける。
「寮での事は女子生徒から聞いた方がよろしい。
カイヤさん、マオリさん。一通り終わったら学長のところへ案内してあげてください」
「了解です!」
「では」
つかつかと去っていく教授を見送り、真新しい部屋に目を向ける。
「へぇ、いい部屋じゃない。
さすがは名門校ね」
「寮生活は門限や決まり事がいくつかありますが、基本的には自由です。
ラリマーさん、もしハイネさんと面会する時は、向こうの受付を通せばすぐなので」
「わかったわ。
ハイネちゃん、遠慮なく私を頼ってね。すぐに駆けつけるわ」
「うん! おおきに、リマ姉ちゃん」
小さな身体から溢れる期待と不安が入り混じった気持ち。
まるで夢の世界のよう。これから、新しい日々が始まる。
「・・・それにしてもラリマーさん。
いくらボクが博士に話を通しておいたとはいっても、よく学費払えましたね。
まぁ博士も大分学長に頼み込んで限界まで減額したみたいですけど」
「えぇ、ホント。メノウったらすごい金額貯め込んでたみたい。
それに、アクイラ王家からも巨額のお金が入れられてたわ。
あんな金額見た事ないぐらいよ。一生遊んで暮らしてお釣りがくるくらいの資産だもの」
「・・・アクイラ王家が、ですか・・・」
「あのお姫様、なかなか義理堅いのね!」
その“お姫様”の行く末は、仲間達しか知らない。
“今の”ミストルテイン国王の正体も、恐らくは・・・――
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