「なーんなーんじゃーっ!!
何が起きておる!!
妾の占いにこんな結果は出ておらんぞ!!」

「ヒィ!! 珍妙な魔物ばっかでやんす!!
エマ、逃げまっせ!!
こんなん姉御くらいしか相手できませんわ!!!
助けて姉御ぉ!! どこにいるでやんすかぁ!!!」

「それでも三十路手前の男か馬鹿者!!
じゃが一理ある!! 妾とて占い以外は能無しじゃ!!
退避じゃ、退避―――っ!!!」

黒ずくめの長身の男と、華奢な少女の2人組。
彼らは脱兎のごとく逃げ出す。



「あははは!!
レイクもエマイユも弱っちいの~!!
ねぇフェナ、あのキモい魔物ぜーんぶ倒してきてもいい?!」

「・・・いい、と思ぅ・・・」

「あっはは!! やったね!!
しばらく暴れてないからウズウズしてたんだぁ!!
フェナ、危なくなったら僕を呼んでね!! 守ってあげる!!
命令はゼッタイだからね!!」

意気揚々と鎌を振り回して丘を下っていくロコの姿。
枯れ木の陰にしゃがむフェナはそれをぼんやり見送る。
遠巻きに、楽しそうに暴れ回るロコを眺めた。

「・・・おそと」

フェナは空を見上げた。
彼女が思い描いていた青い空はここにはない。何故だろう、と小首を傾げる。
濁った空気が肺を刺激する。げほげほと咳が出た。

いつもと違う時間が過ぎていく。
そこにクラインはいないし、嫌いな薬もない。
身体はとても疲弊しているが、どういうわけか少し気分が晴れている。
ほんのわずかな好奇心が、施設ではなく外の世界に留まる事を勧めているよう。

粗方の魔物を倒し尽くしたロコが戻ってきて、鎌を振り払う。
赤黒い液体が絵具のように撒き散った。

「ようし!! 次行こ、次!!
もっと魔物はいないかなぁ~。ほらほら早く早く!!」

ロコに引っ張られるがまま、フェナは立ち上がる。
次は東へ行くか、南へ行くか。
何も知らないフェナは、ロコが引き摺って行く先を目指すより他の選択肢がない。
――それでも、別に嫌な気はしないのだった。






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