地鳴りがする。
大地が湧き立つような、ゴゴゴゴ、という音。
「あっさりと釣られてくれて、まったく姫様という方は昔から変わらない。
単純明快。愚かなまでに一直線だ。
最後の指輪は貴女をここへ誘うためのものだったんですよ?」
「なんだって・・・?」
「だって貴女は“災い”を引き連れていたから。
シェイド・・・いえ、カルセドニーでしたっけ?
まぁどちらでもいいのですが、彼の中に封じられた災いは心が枷となっている。
ですが、私の育て方がいけなかったのか、彼には“壊せる心”がなかったのです。
見えない枷は壊しようがない。だから“作った”。
感謝しますよ、姫様。私が至らなかった彼の心という部分の教育を施してくださって」
「何を、何を言って・・・?
カルセが災い・・・?」
「溢れ出る泉のような魔力。
彼には生まれつきそれがありました。
この世界を更地にするための力は、そんな泉を通して引き出す必要があるのですよ。
端的に言えば生贄というものですか」
リアンは目の前で立ち尽くすカルセに手を伸ばす。
「ほうら。聞こえてきたでしょう?
貴方の中に眠る感情。“死にたくない”という本能がね」
カルセは視界が真っ白になっていくのを感じた・・・――
ただ、この体を生かすためだけに単調な毎日を送っていた過去。
いつ終わるのかわからない、18年間という“何もない”人生を閉じ込めた檻。
まるで現世から隔離されたような牢獄。
誰の、何のために生きているのかわからない。
いつまでこのままなのかもわからない。
僕は、そういう場所で囚われていた。
誰かが僕を呼んでいる。
意識を引きずりこむような、深い深い声なき声。
誰にもなれなかった僕は、これから何になってしまうの?
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