またしてもこの地に足を運ぶ事になろうとは。
相変わらず青白い木肌が密集するその森は、以前にも増して魔力がひしめいている。
その空は黒い雲に覆われ、赤い光が絶望を示している。
赤い光はつい数日前よりも強く光っていた。
「きっとユディさんは無事です。
ですが、何か酷い目に合っているのかもしれません。
赤い光の強さは聖女の絶望に比例するらしいので」
空を見上げるサフィの表情が堅い。
一緒に見上げていたアンバーは首を傾げる。
「あの星、世界の外殻の亀裂だって言ってたけど・・・
もしレムリアさんが意図して光らせているのだとしたら、一体どういうつもりなんだろ。
だってあの亀裂、世界を壊すくらいの力があるんでしょ?
この世界をモノにしようっていうのに、おかしくない?」
「あるいはそれを逆手にとって、何かするつもりなのかもしれません」
懐中時計を見つめながら歩くカイヤはそう呟く。
ぐるぐると針が動き回るところをみると、この一帯の魔力は相当のもののようだ。
「・・・なんか、嫌な感じ。
すごく胸が痛い。この魔力、悪い気配がする・・・」
顔色が悪いカルセは自らの胸を抑えている。
以前までの魔境は、畏怖こそあれど邪悪な気配はなかった。
今はそう、一言で言うならば淀んでいるのだ。
「また俺の肩でも使うか?
有り体に言えば、俺にはその悪い気配とやらが全くわからん」
「その方がいい。全員この魔力にやられていてはまるで話にならないからな。
コーネルはどうかそのままでいてくれ」
「・・・馬鹿にされた気分だな」
カルセを支えつつ歩くコーネルは不服そうだ。
以前アクロに連れられた通りの道を通ると、あの大きな奈落への入り口が顔を出す。
この魔力の発生元はなんなのか・・・――
それを知るよりも先に、凄惨な光景を目の当たりにした。
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