夜が更けていく。
とても静かな夜。
世界は何事もなかったかのように、時を刻み続ける。
膝を抱えたカイヤは、懐中時計の秒針を見つめていた。
「・・・カイヤ、隣・・・いいかな・・・?」
コクリ、と頷くと、カルセが隣に座った。
「・・・ねぇ、本当にメノウさんは死んじゃったんですか?」
実感がなくて、受け止められない。
それはお互いに同じ事。
「死んでしまった。
強くて、ちょっと怖いけど優しい人で、いつも僕達を助けてくれてた。
最期まで、ジストを守ってくれてた。
・・・次は、僕達がジストをしっかり守らなきゃいけない」
「姫様はまだ・・・レムリアさんを追うんでしょうか?」
「わからない。
もし、もう立ち止まると決めたのなら、それはそれでいい。
ジストの“席”は、僕が消えるだけで用意できるのだから」
恐ろしいほど穏やかな声でカルセが口にした言葉。
カイヤは絶望さえ感じる。
「生きたい、って気持ちは、僕にはよくわからない。
でも死にたくないって気持ちはすごくわかる。
・・・それでも、僕がジストにしてあげられる事って、それくらいしかないんだ」
「・・・カルセドニーさんまで、そんな・・・。
まだわからないじゃないですか。もしかしたら、共存できる道も・・・」
「そう願うだけなら、罪はない、のかな・・・」
カルセは微かに微笑む。
純粋に願うその姿は、何かに赦しを乞うようだった。
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