「メノウさん!
しっかりしてください、メノウさん・・・!」
涙を零しながらサフィが治癒を施すが、流れ落ちる血を止められない。
「どうして?! どうしてなの?!
いつもなら、ちゃんと・・・!!」
「サフィ・・・。もうよせ、どうにもならんわ、こんなん・・・」
掠れた声が漏れる。
「メノウさん!
しっかりしてよ、何弱気になってんの!!」
「なんで、なんで、なんで・・・!!」
最大限の力で治癒しているはずなのに、傷が塞がらない。
深々と貫いた痕跡は、非情にも命を吸い取っていく。
「もういい、サフィ、やめろ・・・
お前が死んでまうわ・・・」
彼の指先がサフィの口元に伝う赤い雫を拭う。
「いや、いやぁ・・・!
私、私・・・!!」
顔を覆って泣き叫ぶ彼女の震える肩をアンバーが抱く。
「メノウさん。・・・いいよ、言って」
彼は何かを悟ったようにそう囁く。
――もう何度も、俺はこういう場面に合ってきたから。
「ははっ・・・。
確かに、見届けたわ、コーネル・・・。
お前、いい腕しとるわ・・・」
銃を握りしめたままのコーネルはじっとメノウを見つめている。
「なぁ、姫さんの事、頼むわ・・・。
こっちはここまで、らしくてな・・・」
「・・・あんたに頼まれずとも、俺はそうするつもりだ。
だから、その・・・。もう何も、心配するな。
あんたの事は、・・・尊敬してる」
「・・・何を、言っているのだ、皆。
メノウは、まだ、ずっと、私と・・・――」
「すまんなぁ、ジスト・・・」
大きな手がジストの頬を包む。
「お前なら、なんだって出来るさ。
最後まで見ていてやれなくて・・・ごめんな・・・」
信じてる。
――そう呟く。
「やめてくれ・・・。やめてくれ、そんな言葉は・・・!!
君は私と、最後まで来るんだ!!
どうして私を庇った?!
私の片腕など、くれてやってもよかったのに!!」
「ばーか。これ以上お前の身体に傷つけてたまるかっての・・・」
この期に及んで、彼は微笑んでいる。
ジストを愛おしげに撫でる指先から少しずつ力が抜けていく。
「おおきにな、ジスト。
・・・楽しかった。
負けんなよ、絶対に・・・――」
する、と彼の腕が落ちる。
咄嗟に受け止めたジストは、その手を握りしめた。
「メノウ、やめてくれメノウ、返事をしてくれ、いやだ、いやだ――――っ!!!」
空からの光の筋が、彼へと差す。
誰かが彼に手を差し伸べている。
――ごめんな。嘘ついて。
――怒るやろなぁ、“お前”。
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