見間違えるはずがない。
それは絶望の光。世界の外殻に走るヒビから漏れる禍々しい印。
「な、なぜ・・・?!
この世界は、まだ崩壊など・・・!」
「ジストさん!
あの光は聖女の心が映されたもの。
この世界であの光を示せるとしたら、私か、お姉ちゃんか、・・・」
「・・・ユーディアが危険な目に合っている、と?!」
一行は慌てて屋敷から飛び出す。
空が渦巻くように、黒い雲がどこからともなく現れる。
「あの雲の中心の下は・・・ミストルテインじゃないか?」
そう口にしたコーネルが、急にフラつく。
「どうした、コーネル?!」
「くっそ・・・!
頭が割れそうだ・・・!」
びり、と電撃が走るような感覚。
よろめいた彼を咄嗟に支えていたアンバーがぎょっとする。
「王子、今、一瞬消え・・・?!」
瞬いたその刹那の瞬間だけ、彼の“存在感”が消えた気がした。
無自覚だったのか、アンバーの言葉を聞いたコーネルが目を見開いている。
「あんさん、そろそろアカンのちゃう?
・・・気張れよ。勝負つく前に消えたら何もならへんで」
「ミストルテインに行こう。
コーネル、なんとか持ちこたえてくれ。きっとあそこに・・・アクロがいるはずだ。
そんな気がするんだ」
「あぁ。絶対に・・・逃すものか・・・!」
再び飛空艇は舞い上がり、王都ミストルテインへと舵を切る。
空を行くうちに雷も燻りだした。
「あまり空でゆっくりしていると危険ですから、飛ばしますよ! 皆さん!
掴まっててください!」
嵐が訪れそうな気配。
吹きつける風に船体を揺らされながら、嵐の中心下へと向かう。
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