ガーネット達と別れ、一行は再び飛空艇に乗り込む。
フロームンドの近くで着陸して畑を見回すが、どこか奇妙だ。
以前訪れた時はジストを歓迎する民が大勢いたものだが、どういう訳か人の気配がない。
今この時期は、次の秋の収穫に備えた種まきの最盛期だ。
だというのに誰一人として畑に立っていない。
ジスト達は近場の民家に立ち寄って話を聞こうとするが、扉を叩いても返事がない。
鍵がかかっておらず、そっと触れるだけで扉が開く。
もちろん、中は無人だ。
その家に限らず、街中から人が消えている。
嫌な予感が胸を騒がせる。
急いで丘を駆けあがり、フリューゲル邸へと向かう。
せめてこの一家だけでもここにいるようにと願いながら。
その願いも空しく、やはりフリューゲル邸もすでにもぬけの殻。
「おい、フリューゲル公、いないのか?!」
屋敷の中に響き渡るほどの声でジストが呼びかけるが、返ってきた言葉はない。
「ねぇジスト、ユーディアのお母さんから手紙がきたのっていつ頃?」
アンバーが尋ねると、ジストは腕を組んで唸る。
「昨日だ。
この有様・・・この手紙を出した後すぐに失踪したとしても一昨日あたりだろうか」
屋敷の中に荒れた形跡はない。
ただ人間だけが忽然と消えているのだ。
そう、人間だけ・・・――
キャンキャン、と吠える声がする。
「犬の声か?」
「ユーディアの子犬だ!」
カルセはすぐに子犬の声がする方へ向かう。
慌ててジスト達も彼の後を追った。
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