廊下を歩いていたウバロが目を疑う。
部屋から出ないはずのフェナが、ロコに引っ張られてこちらへ来る・・・――
「お、おい、ロコ?!
一体何が・・・」
「クライン死んじゃったよ~。ざーんねん。
僕はクラインの命令に従うんだ~。
やっとフェナとず――――っと一緒にいられるよ~!」
「く、クラインが・・・?!」
「はなして、はなしてロコ、クラインが・・・」
ぽろぽろと涙をこぼしながら抵抗するフェナに目もくれず、ロコは廊下を走り抜けていく。
「待てロコ、フェナを外に出したら・・・!」
「しょーがないじゃん、だって指令はゼッタイだもん!
あはは、体が止まんないやー!!」
小さな2人はそのまま去ってしまった。
ウバロは急いで地下へ下る。
力任せに扉を開けると盛大な音を立てて壊れてしまった。
「クライン! おい!
ヘタな冗談はよせ! 返事をしろ!!」
呼びかけに応えはない。
部屋の中を進んだところで、ウバロは唖然とする。
陳列されていた“実験体”の生命維持装置が全て切られている。
ここにはもう亡骸しかない。
――そして、足元にも。
「クライン、お前・・・――!」
仰向けで倒れているクラインの瞳に光はない。
飛び散った血液が頬を濡らし、涙のように一筋の跡を残している。
ウバロは静かに膝をついた。
「・・・あまりに、惨い・・・」
彼の胸は切り裂かれていた。
生命の中枢を抜き取られた彼は、もう息をしていない。
「すまない、クライン、守ってやれなかった・・・
俺は、俺は・・・――」
大きな手がクラインの顔に触れる。
せめてわずかでも安らげるよう、彼の瞼をそっと下ろした。
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