古教会に戻った一行は、事の顛末をガーネットに話す。

「マジかよオイ。そいつがマジモンの“所長”じゃねーか」

「やっぱり、彼はリアンの並行人格・・・。
殺されていたとばかり、私は・・・」

「あぁ、そりゃもっともだ。
アタシだって所長は死んだって聞いてたからよ」

ぐい、と水を飲み干し、ガーネットは一息つく。

「アタシは機関でもペーペーのニューフェイスだ。初代所長と二代目のいざこざなんか知らね。
まぁでも、ひでえストーリーってやつだぜ。
あのよくわかんねークスリ、いくとこまでいくとモンスターになっちまうってんだからよ」

魔力を増大する例の薬。
人の身で耐えられないほどの魔力を持てば、その姿は禍々しい魔物へと変貌してしまう。
“本物の”レムリアは、その非道な実験の最初の犠牲者だったのかもしれない。
しかしサフィは首を傾げる。

「なぜレムリアさんはアークエルフの集落を襲ったのでしょうか・・・?
ミストルテインの襲撃はリアンさんが仕組んだと考えられるかもしれませんが、アークエルフは・・・」

「レムリアさん。知ってます。
アークエルフの女性と結婚した方なんです」

奥の部屋からセレスが顔を覗かせた。

「その昔、リスタという名前のアークエルフの女性が集落に住んでいました。
もうずっと前に亡くなってしまった方なのですが、彼女は集落に住む同族の中で初めて外のヒトと結ばれた方なんです」

「・・・奥さんを探していたんでしょうか。本能的に」

カイヤは難しい顔をしている。



彼は多くを語らなかった。
自身を“負けた”と表現した部分は、恐らくはこの世界における存在のこと。
世界に選ばれなかった方の彼は消えゆくのみ。

言葉少ななカルセは、消えゆく“彼”の姿を何度も思い返していた。





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