朝日が眩しい。
直したてのバルコニーから身を乗り出すリシアが部屋に向かって呼びかける。
「クロラ!!
見てよ、飛んでるわっ!!」
呼ばれてやってきたクロラも朝空を見上げる。
翼が生えた船が飛んでいる。
まるで雲の海を進むかのように、ゆっくりと、滑るように。
「本当にやり遂げるとは・・・。
つくづく驚かされますよ、あの人達には」
ふっ、とクロラは笑う。
彼が思わず漏らした笑顔に、リシアは目が釘付けになった。
温かくなり始めた風に揺れる緑の髪。
アルマツィアの端の崖から空を見上げる姿。
「・・・もうすぐ、なのか。
“お前”の行き着く先は」
胸がざわつく。
この世界に“彼”が求めた結果があるのか、それとも・・・――
「雲を掴むような夢でも、お前はきっとこなしてしまうんだろうな・・・」
空を行く船の影に手を伸ばす。
届かないと知りながら。
「うおっ?!
なんやあれ?!」
ブランディアのオアシスからアルマツィア方面の空を見上げる。
何かが空を飛んでいる。
早朝の水汲みに出ていた住人が揃って同じ方向に目をやる。
それはハイネも同じ。
「船が・・・飛んどる・・・」
空想の世界にあったような光景が現実にある。
そして、ハイネには何故か実感があった。
――あそこに、ヒメサマ達がいる。
「えぇなぁ、空飛ぶなんて。
ハイネ姉ちゃん、ガッコー行ったらアレ作ってやー」
小さい男の子に言われ、ハイネは笑う。
「せやな!
皆が空飛ぶ世界、おもろいやん!」
向こうからは見えるはずもないが、ハイネは空飛ぶ船に向かって大きく手を振った。
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