「ぼっ、ボクが操縦するんですか?!」

慌てふためくカイヤの両肩にジストが手を置く。

「君が作ったのだから、君がいちばん熟知していると思うのだが?」

「そっそれは、そうですけども!
ででででも、さすがに緊張・・・!」

「なに、追い追い我々にも操縦を教えてもらえれば交代で対応できよう」

「ううっ・・・わかりましたよ、もう・・・」

ついに船が空を飛ぶ。
その瞬間に立ち会おうと、携わった人々は期待に胸を膨らませる。

「よ、よーし! 行きますよ!!」

一行は飛空艇に乗り込む。



内部はほとんど船だ。
貿易船だった頃の倉庫が小部屋へと変わり、ジスト達が個別に使えるように設計されている。
まるで動く宿屋だ。

操縦席に座るカイヤは深呼吸をする。
緊張でガチガチと体が震えている。

「ど、どうしよう、墜落したら・・・」

「何かあったら外からグレンが何とかする言うてるし、まぁ何とかなるやろ」

カイヤの後ろで呑気にメノウが答える。

「あの奈落に飛び込む覚悟があるんだ。今更上空がなんだという」

メノウの隣にいるコーネルも、意外と冷静である。

「あぁ、もう、悩んでも仕方がないっ!!
起動します、掴まっててください皆さん!!」

カイヤがレバーを引くと、ギギギ、という音が船の側面から聞こえてきた。
翼が起動し、うねるような轟音を起こす。

「行っけ――――っ!!」

少しずつ船体が浮き上がり、窓の向こうの景色が下へと流れていく。

「飛んだ、飛んだぞ!!
成功だ、カイヤ!!」

窓に張り付いていたジストが歓喜の声を上げた。





「マジに飛んでやがる」

地上で眺めていたグレンは思わずそう呟く。

「こんなモンが普及したら、俺なんてお役御免じゃねぇか。なぁクーちゃんよ」

「そうかもね」

上空をゆっくりと旋回する飛空艇を見つめるクレイズは微かに笑う。

「先輩、わりと冷静ですね。
いつもならテンション上がりまくりでしょう」

「あぁ、うん。なんていうか・・・実感がない、かな」

学者陣はぼんやりと空を見上げる。
向こうにいる作業員達は両手を上げて大喜びだ。

「ま、とにもかくにも、大丈夫そうで何より。
そろそろ学校戻ります? 先輩」

アンリが振り返る。

――が、

「僕は・・・いいよ。うん。
もう、駄目みたいだ――・・・」

ふら、とよろめいたクレイズが膝から崩れ落ちる。

「クー?!」

「先輩?!」

倒れたクレイズに駆け寄ったグレンとアンリが彼を抱き起こす。

「クー、どうしたんだ?!
ひでぇ熱じゃねぇか、オイ」

クレイズはすでに意識が遠のいており、グレンに返す言葉がない。

「・・・ちょっと待ってください、先輩。
この症状って、まさか・・・」

「お前なんか知ってんのか?!
こいつ、今度はどんな無茶しやがった?!」

「・・・いえ、これは・・・」

アンリの青ざめた顔が物語る。
只事ではないとグレンはすぐに悟った。





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