カルセは、鏡の前に立ち尽くす。
そこに映る自分を、じっと見つめる。
「カルセ、そろそろ時間だぞ!」
部屋に訪ねてきたジストは、元気よく扉を開けてから腰を抜かす。
「か、カルセ、これは一体・・・?!」
いつも通りのぼんやりとした顔、だがその髪は真っ白だった。
彼の目の前にある鏡は割れて破片が床に飛び散り、それに触れてしまったのか、彼の手には血の跡がべっとりとこびりついている。
「ジスト・・・僕・・・何かおかしいのかな・・・」
彼自身も混乱しているのか、青銀の瞳が震えている。
「だ、誰かに襲われたのか?!
あ、アクロとか、じゃなかったら・・・アクロとかか?!」
慌てふためくジストを見て彼は俯く。
「たぶん、僕、なんだと思う・・・
寝て起きたら、こんな事に」
「・・・カルセが自分でやったのか・・・?
どれほどの悪夢を見たというのか・・・」
夢を見た覚えはない。
ぐっすりと眠った上で、知らぬ間に出来ていた手の傷の痛みで起き上がったのだと彼はいう。
「と、とにかく、傷をサフィに癒してもらおう。
鏡は・・・劣化で割れたとでも伝えよう。
心配するな、カルセ!
悪い夢にうなされたのだろう」
それにしても夢見が悪すぎる。
完全に白く成り果てた髪に触れつつ、カルセはざわざわと落ち着かない胸に手を当てる。
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