「この戦々恐々としているところに呑気なものですね、ホントに!!」
明日の試験的な飛行を前に、カイヤはいても立ってもいられないほど緊張していた。
それをジストがヘラヘラと受け流す。
「まぁまぁ、良いではないか!
今宵は労いの席、存分に飲んで食べて騒いだ方が緊張も緩むというものだろう?」
「まだ終わりじゃないんですよ?!
そもそもちゃんと飛ぶのかって心配だし、飛んだら飛んだで不備が出てくるかもしれないし。
飛ばしてからが本番なんですよ! もっと改良しなきゃ・・・」
「なぁ、カイヤよ。
少しだけ私の我が儘に付き合ってはくれまいか」
「散々付き合わされてますけど?!」
「“私の”、だ。
旅のためでも、世界のためでも、なんでもない。
一個人の私の我が儘だ」
ジストは微笑んでいる。
それが、妙に大人びて見えた。
達観したような、それでも何かを見つめていたいと思う瞳。
「・・・どうしたんですか、姫様?
なんかヘン・・・」
「なぁに、柄にもなく私も緊張しているのだよ。ははは!
さぁ、共に来るがいい。他の学者陣もすでに向かっているぞ」
「まったく、皆子供っぽいんだから・・・」
ジストに連れられ、カイヤは教会へと向かう。
暗くなり始めた空の下を歩き、教会の扉を開ける。
室内の眩しい光が2人を出迎えた。
ジストはおもむろに手を上げる。
「皆、主役を連れてきたぞ!!
この一大プロジェクトの第一人者、カイヤ・レーゲン女史だ!!」
割れんばかりの拍手が起こる。
「は?
ひ、姫様、どういう・・・」
「見た通りの意味だ。
君の努力の結晶を称えて、この場を設けさせてもらった」
「え、えぇぇぇ?!」
「全員、飲め! 食え! そして騒げ!!
ちなみに女史に酒は飲ませるでないぞ!!」
神の膝下たる教会でこの騒ぎよう。
だが今晩ばかりは見逃してくれるだろう。
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