「ええと、ひとまずこの部位なら着手できるかな・・・?
あっ、でもまだここがちょっとな・・・
う、ううう・・・」
相変わらずカイヤは頭を抱えていた。
大勢の集団が到着したと聞いて、いよいよ時間がなくなってきた。
逸る気持ちと自身の力のなさに気がおかしくなりそうだ。
「1隻しかない・・・
失敗はできない・・・
材料だって限られているし・・・」
誰もいない部屋に引きこもって図面と向き合うが、頭を掻き毟りそうなほどに焦っている。
「もうっ! なんで?!
いつもならすぐ閃くのにっ!!」
思わず叫んだところで、遠慮がちにノックが聞こえた。
「・・・――どうぞ」
「あ、あの、ごめんねカイヤ。僕なんだけど」
カルセだった。
人がこんなに焦っているのに、自分以外の人々は平気な顔をしている。
あぁ、恨めしい。
「なんですかっ!
用があるなら手短にお願いしますっ!!」
「ずいぶん荒れているね、カイヤ君」
心臓が止まったかのように身動きがとれなくなる。
ぎこちなく、開いた扉の方を見ると・・・――
「久しぶり。元気してた?」
「え・・・、なんで、博士・・・」
「あ、僕もいます。どうも」
カルセの後ろからクレイズとアンリが顔を覗かせた。
「本当はグレンも来てるんだけど、教会にいたシスターさんを口説きに行っちゃってね。
あぁ、仕事はすると思うから大丈夫」
「え・・・、え・・・?
カルセドニーさん、どういう・・・」
「あ・・・うん。勝手にごめんね。カイヤ、怒るかなって思ったんだけど・・・。
皆、手を動かす人の事は考えていたんだけど、頭を動かす人の事って、考えてなかったみたいだから・・・。
グレンさんにお願いしたんだ。そしたらこの2人も来てくれた」
「・・・う、」
堪えていた涙がどっと溢れる。
「よく頑張ったね、カイヤ君。
大丈夫、僕らも手伝うよ」
「うわあああん!!!」
駆け寄ってクレイズに抱きつくカイヤは小さな子のように泣きじゃくる。
「もう、もうどうしようかと、ううっ、・・・」
「こんな計画、僕だって1人でやれなんて言われたら無理無理。
一緒にやろう、カイヤ君。僕達は学者仲間だ」
「ぐすっ・・・。はい、ありがとうございます」
「それにしても、どえらい計画ですねぇ、これ。
先輩がいた別の歴史?でしたっけ?
もはや夢か何かでは・・・?」
「理論上はできる、ただそれだけ。誰も作り上げた事はないんだ。
でも君達がいれば、出来ちゃうかもね。本当に」
さて、とクレイズは腰に手を当てる。
「早速取り掛かりますか。
カイヤ君、君が途中まで描いた設計図を見せて。それをベースに考えよう」
「はい!」
再び元気を取り戻したカイヤを見て、カルセはほっと一息つく。
「頑張ってね、カイヤ。
僕はグレンさんを引っ張ってくるね」
「はい! お願いします!」
ごしごしと涙を拭いてから、カイヤは深々と礼をする。
「カルセドニーさん、ありがとうございます!」
うん、と頷く彼は笑っていた。
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