「姫様~!
やーっと見つけた!!」

汽車が走る道の方角からカイヤが駆けてくる。
研究施設を後にしたジスト達は、ようやくカイヤ達と合流したのだった。

「まさか汽車に乗ってきたのか?!」

「そう!そうなんです!
ここから離れた、えーっと、なんでしたっけ。ねぇ王子」

「ウェナンだ」

「そう、ウェナン!
ウェナンって国からここまでスイ~っと!!
もうボク興奮しちゃって!!
だってあれすごくないですか?!
あんなに大きい機械が熱と蒸気で動くんですよ?!」

「カイヤ、すごかったよね。
動力室を見させて欲しいって、乗務員さんに拝み倒してたもの」

心なしかカルセも少し微笑んでいる。
が、コーネルは青白い顔で傍の街灯にもたれている。

「二度と乗るか、あんなもの。
まだフラフラする・・・」

「なんや、あんさん。酔ったんか。そいや船にも酔ってたな、昔」

「「煩い」」

コーネルとアクロの声が重なり、思わずアクロの方を見る。
はっとしてから、彼はゴホンと咳払いした。

「アクロさんみたいな概念になっても、やっぱり乗り物酔いするんですか?」

「・・・黙れ小娘」



時間差でアンバーとサフィの姿も現れた。

「やっぱここで合ってたかー!
永遠に合流できなかったらどうしようかと思ったよ。ねぇサフィ」

「きっと黒の国に近しいところにいらっしゃるだろうって、予想してきたんです。
よかったです、お会いできて」

「おお、サフィ! 無事だったか!!」

再会のハグで盛り上がるジストに、サフィは慌てて事の顛末を告げる。

「ジストさん、“聖女”がなんなのか、少しだけわかったんです。
あと、もっと早急のお話があって」

わたわたと彼女は焦っている。

「あ、あの、確信はないんですけれど・・・
“2人の聖女”、1人は私で、もう1人が・・・――」





「ユーディアが、聖女だと・・・?!」

近場の店でテーブルを囲み、サフィがラチアから聞いてきた話をジストに伝える。

「この世界のユディさんはもう亡くなってしまっているようなので、決定的とはいえないのですが・・・
“ここの私”の、生まれつきの強い魔力が足の自由を失っている様子が・・・
どうしても、ユディさんの姿と重なってしまって。
考えすぎかと思ったのですが、一度お伝えしておきたくて」

「確かに、レーヴァテインはミストルテインに等しい。
生まれも育ちも立場も、ユーディアと合致している。
となると・・・」

「もしも、もしもだよ。
レムリアさんが魔力の源としての聖女っていう存在に気が付いていたとしたら・・・」

「ユーディアが危ないってこと?」

カルセが不安そうに尋ねてくる。
否定したいが、頷くしかない。

「ここからは時間が惜しい。
レーヴァテインに向かって飛空艇の設計図を探そう。
その設計図を私達の世界に持ち帰る事が出来たとしたら、向こうで飛空艇を作れるかもしれない。
飛空艇が手に入れば、あらゆる場所へ最速で向かう事ができる。
そうだろう?」

しかしコーネルは渋い顔だ。

「聞いた限りではレーヴァテインに設計図がある確証もないんだろう?
それに、例え宝物庫にあったとしても、アクイラ家のように血を使う鍵では誰も開けられない」

「いや。そうとも限らないのだよ」

ジストは声を潜める。

「レーヴァテインに行けば、“私”が何者か、わかるかもしれない。
この身に流れる血の正体が、確信に変わるんだ。
行かせてほしい」

「・・・まさか」

アクロは言葉を詰まらせた。
同時に、彼の中のわだかまりが瓦解したかのように肩の緊張がぷつりと切れる。




-297-


≪Back | Next≫


[Top]




Copyright (C) Hikaze All Rights Reserved