アドに案内され、施設の最上階へとやってくる。
ちょっとした山からの見晴らしのように、大窓から随分と遠くまで世界を見渡せる。



人気のない倉庫らしき部屋の前に立ったアドは、首にかけていた手のひら大の札を扉の横の機械にかざす。
ピッ、と音が鳴ると、倉庫が開錠された。

促されて中に入るが、真っ暗で何も見えない。
アドが白衣の内から小さな照明器具を取り出して床を照らす。
そこには、薄い金属で作られた羽のようなものが置いてあった。

「これは一体?」

「飛空艇、つまりは空飛ぶ船。その翼の一部です。
その昔、“ケイト”という人物が飛空艇を作ろうとした経緯がありましてね」

「その人物は今・・・」

「もう故人です。ちなみに彼はオズの弟だそうですよ」

オズは、弟は殺されたと言っていた。
制作者が死んだ事で、この飛空艇は未完成のまま凍結されたのだろうか。

「・・・ほんまに空なんか飛べるん?
さっき見た汽車なんかより断然便利やん」

「仰る通り、飛空艇が主流になったならば、今その辺りを走っている汽車など時代遅れのジャンクになったことでしょう。
ですが、実際のここはそうならなかった。
考える頭があっても、作り上げられるだけの資源がもう残されていなかったのです。
元々飛空艇の設計図はレーヴァテインで作られたものでしたが、今となっては行方知れず。
レーヴァテインは既に滅びた国ですが、宝物庫に設計図が遺されているかもしれないと血眼になって探しに行った者もいました、が・・・
いかんせん、亡国の宝物庫を開けられる王族は既に途絶えておりますので」

「宝物庫・・・」

「どしたん、姫さん?」

「・・・いや。
ドクター・アド。例えばその設計図があり、材料を調達できたのなら、飛空艇を作る事ができる・・・という事、だな?」

「それはまぁ、その通りですけど」

「ここからレーヴァテインへはどうやって行く?」

「先程話題に上がった汽車に乗れば数時間で着きますよ」

「わかった。よし、決まりだ。レーヴァテインへ向かうぞ!」

ジストが何を閃いたのかよくわからないが、メノウとアクロはひとまず素直に彼女に従う。




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