街の中には人間はおらず、代わりに奇妙な機械が歩き回っていた。
例えるのなら鳥のような体、細い二本足でカシャンカシャンと音を立てて巡回している。
首をキョロキョロと動かして、不審物を感知しようとしている。

建物の陰で死角となっている場所を選んで歩き、宮殿――もとい要塞に近づく。
高くそびえ立つ城壁、その向こうの窓で人影が動いた。

「あそこの、あの人からです。この不思議な感じ」

窓の方を指差したサフィは、自分の指先を見てぎょっとする。

「きゃ・・・?!」

指先が、“ない”。
いや違う、よくよく見れば輪郭がわかるし、もう片手で触れれば触れられる。

「わ、私・・・消えてる・・・?!」

「待って、サフィ!
ちょっと要塞から離れてみよう」

アンバーに言われるがまま、来た道を戻ってみる。
すると、指先が彩りを取り戻した。

「ど、どういう・・・」

「サフィ、これって王子とアクロのやつと同じだよ! ほら、並行人格!
君が今見た人は、きっと君の並行人格だ!
同じ世界にいると片方が消えてしまうってやつ!
これ以上近付いたら・・・」

「いえ、行かせてください!
どうしてここに“私”がいるのか、知っておかなきゃ・・・!」

「えぇぇ?!
そんな危ない事・・・!!」

瑠璃色の瞳が必死に見つめてくる。
――あぁ、こうされると弱いんだよな。

「・・・わかったよ。でも条件がある。
もしも君が完全に消えてしまいそうになったら、俺は“ここの君”を殺す。
俺は君の命を第一に考えるから。いい?」

「・・・わかり、ました・・・」

もう一度要塞に向き合う。
ゆっくりと、2人は城門をくぐった。




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