ジスト達は少し高い丘の上に座り、世界を見渡す。
どこをとっても黒く、暗く、淀んでいる。
自然というかけがえのないものと引き換えに手に入れた人類の世界。
神にさえ見放されたような、不毛の地。

アクロは空を指差す。
相変わらず暗雲に覆われた空だが、彼が示す先にだけ、真っ赤な星のようなものが輝いていた。
美しい、というよりも恐怖を煽る禍々しい赤。

「“終焉を告げる光”。ここの人々はそう呼んでいる」

「ただの星ではないようだが・・・?」

「あぁ。あれは終末を予知する絶望の光。星というよりも、世界の外殻の亀裂と呼ぶのが正しい。
限界まで壊れた“世界”はやがて滅びゆく。歴史ごと、無に帰す。
俺も今まで渡った世界で何度かアレが輝く姿を見たが、ここまではっきりと輝いているのは初めて見た。
この世界は遠くないうちに滅びるだろう。
ここまで大地を汚し切ったのだから、あとは腐り落ちるのを待つだけ。
お前達の世界にいる研究者共も、いよいよ焦っている事だろう」

世界を壊すほど発展した歴史。
そして腐りかけの大地を捨て、新たな世界を侵していく。
永遠に終わらない、逃避行。

「・・・リアンは、この世界の人を救おうと・・・
だからこそ、我々に非情でいられるのだろうか?」

「さぁ、どうだか。
あの賢者は何処へ行ってもまるで心が読めない。
まさか世界を移動するという発想に至る“あいつ”に会うとは思っていなかったがな」

この世界の人々にとってはまさに救世主。
だがこちら側の人々にとっては悪。
ただの感情だけで裁く事が、果たして善なのか。

「結局はどっちが先に滅びるか、や。
こんなん、正解なんてどこにもない」

遠くを見つめるメノウはそう呟く。

「君はきっと、私がしたいようにしろと・・・
そう言うのだろうな」

「あぁ。
お前に忠誠を誓った身や。
お前がどっちの世界の連中に恨まれようと、ワイはお前の決断を信じる」

「はは。心強い味方だな。
アクロ、君ももちろん私を支持してくれるな?」

「それがお前の生き残る道ならば、な」

彼らから揺るぎない気持ちを感じる。

「・・・この世界に来るまでは、答えは決まっていた。
だが、この世界を見てしまったから、また揺らいでしまう。
それでも、ただリアンを斬り捨てるだけではない、決断のための理由を見つけられる気がしている。
無茶に付き合わせてすまない」

「今更やん」

改めて2人の気持ちを確認したところで、ジストは立ち上がる。

「さて、他の皆を探さねばな。
ひとまずダインスレフと思しきあそこへ行ってみるか」

王都フランベルジュから西、彼女はそこを指差した。




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