「・・・ミシャって子、ボクにはどう見ても・・・」

「間違いない。
今のアクロは、“ここの俺”の姿をしている。
あいつはここの俺を殺して成り代わったんだ。
ミシャを救ったのが“俺”なのかアクロなのかはわからないが」

実姉にそっくりの人物を見送った後だ。さすがのコーネルも堪えるのだろう。
適当な瓦礫の上に腰かけ、彼は長く深いため息を吐いた。

「十分あり得る未来だ。
もしもリシアが嫁がず、ルベラかイオラが教皇になったとしたら、あのカレイドヴルフもきっとこうなっていた。
リシアの心の犠牲で、あのカレイドヴルフは保たれているんだ」

コーネルはがっくりと下を向く。

「・・・正直、リシアの気持ちなんて何1つ考えていなかった。
違うな。考えたくなかった、わかりたくなかったんだ。女はただ駒であれ、と。
叔父上を散々見下しておいて、やってる事は同じだった。
・・・くだらない。馬鹿馬鹿しい。今更気付くなんて」

「元の世界に帰ったら、ちょっとは姉孝行した方がいいですよ」

「ふん・・・」

気を取り直して立ち上がったところで、コーネルはふとカイヤを見る。

「そういえばあの賢者、ここの生まれなんだろう?
小娘、貴様の並行人格もどこかにいるんじゃないのか?」

盲点だった、とばかりにカイヤは飛び跳ねる。

「そ、それ!
つまり博士は子持ち?! そういう事になりますよね?!
もっと言うと妻子持ちって事・・・?!
そんな話聞いた事ないのに!!」

「・・・でも、奥さんと自分の子がいる人が、わざわざ他の子を育てたりするのかな」

「それも・・・そう、ですよね・・・?」

そういえば、育て親のはずのクレイズ自身については、カイヤは何も知らない。
今まで何不自由なく暮らしてきたが、その背景には何か見えないものがある・・・――

少し肌寒いのは吹き抜ける風のせいか、それとも。




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