城門まで戻り、アクロやメノウと合流する。

「姫さん、平気やったか?
襲われてへんか?」

「大丈夫だ、心配するな。
いやはや、ここのヴィオルは別人のような男だった。
・・・いや、別人なのは確かか」

「そうか」

少し緊張した空気が流れる。
ジストが話したい事を察したメノウが身構えているのだ。

「・・・メノウ。君は今、幸せか?」

ジストが何を言いたいのか。
彼女なりに最大限の気遣いを言葉にする。
そして彼はジストの気持ちを受け取る。

「あぁ、幸せやで」

「・・・わかった」

食いしばるように拳を作っているジストの頭に、ぽん、と大きな手が乗る。

「姫さん、おおきにな。
・・・行こか」

「いいのか、傭兵?」

アクロが念を押すが、メノウはただ頷く。

「あんさんもおおきに。
・・・こっちにはこっちなりの人生がある。
この世界は・・・まぁ、“夢”なんやて思っとくわ」

3人はそっと城門を抜ける。



「・・・あれ、なんか、懐かしい、ような・・・」

枯れた花を処分していた王妃がふと城門に目をやる。
そこには誰もいない。

――もう、いないのだ。どこにも。






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