城門まで戻り、アクロやメノウと合流する。
「姫さん、平気やったか?
襲われてへんか?」
「大丈夫だ、心配するな。
いやはや、ここのヴィオルは別人のような男だった。
・・・いや、別人なのは確かか」
「そうか」
少し緊張した空気が流れる。
ジストが話したい事を察したメノウが身構えているのだ。
「・・・メノウ。君は今、幸せか?」
ジストが何を言いたいのか。
彼女なりに最大限の気遣いを言葉にする。
そして彼はジストの気持ちを受け取る。
「あぁ、幸せやで」
「・・・わかった」
食いしばるように拳を作っているジストの頭に、ぽん、と大きな手が乗る。
「姫さん、おおきにな。
・・・行こか」
「いいのか、傭兵?」
アクロが念を押すが、メノウはただ頷く。
「あんさんもおおきに。
・・・こっちにはこっちなりの人生がある。
この世界は・・・まぁ、“夢”なんやて思っとくわ」
3人はそっと城門を抜ける。
「・・・あれ、なんか、懐かしい、ような・・・」
枯れた花を処分していた王妃がふと城門に目をやる。
そこには誰もいない。
――もう、いないのだ。どこにも。
-285-
≪Back
|
Next≫
[Top]
Copyright (C) Hikaze All Rights Reserved