不気味なほど静まり返った森を進んでいくと、視界が開けた場所に出た。
青白い木肌の大木に囲まれていた威圧感から解放されて安堵したのも束の間、その先は断崖絶壁であるとすぐに気が付く。

「わ、わぁ・・・
底が全く見えないんですけど・・・」

奈落、という言葉はここのためにあるとでも言えそうなほど真っ暗闇が広がっている。

「ね、ねぇアクロ。ここからどうするの?
まさか・・・?!」

「あぁ。飛び降りる」

涼しい顔でとんでもない事を言う彼に、一行は蒼白な顔を向ける。

「安心しろ。ここは時空が歪んでいて、重力通りに落ちる場所ではない」

「安心て、あんさん・・・」

さすがのメノウも躊躇っている。

「ジスト。俺に掴まれ。後の連中は適当になんとかしろ」

「ちょ、酷くないそれ?!
やばいって~・・・この深さはちょっと・・・」

ぐ、と息を飲んだジストはアクロの手を取った。

「ジスト、正気か?!」

「大丈夫だ!!
どんな事があってもメノウが助けてくれる!!」

「管轄外やで、こりゃ・・・」

彼女は右手でアクロを、左手でメノウの腕をがっちりと掴む。

「行ってくれ、アクロ!!」

「舌を噛まないように歯を食いしばっておけよ。
その他貴様らも早く来い。小娘の魔力が必要なのだから」

「あかん、遺書書かな・・・」

メノウが言い終わる前に、アクロは2人を引き連れて飛び降りてしまった。

「メノウさ―――ん???!!!」

落ちていく3人の姿が暗闇に飲まれていく。



嘘のように全く音がない。

「わ、わ、わ、早く行かなきゃ、でも、でも!!!」

身を竦めるカイヤの手をカルセがとる。

「行こう」

「え?!
え―――――っ???!!!
やだやだ王子も道連れに――――っ!!!」

「待ておいコラ、放せ小娘ええぇえぇぇえぇぇぇ・・・」

転がり落ちるように更に3人が落ちていく。

「・・・サフィ」

「・・・はい」

「・・・行こう!!
サフィは俺が守る!!」

「あっ、ちょ、アンバーさ、そんな、抱き上げなくても・・・!」

無駄に助走をつけてサフィを抱えたアンバーも後を追う。




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