「・・・なんだこの日記は・・・?
これが本当に母上の日記なのか・・・?」

誰かに救いを求めるページを最後に、以降は白紙となっている。

「カルセドニーって・・・書いてあるな」

ペラペラともう一度ページをめくりながら眺めていたメノウは隣にいるカルセをチラリと見る。

「おいジスト。レイス王妃はどんな最期だったのか聞いた事はあるのか?」

「産後の病で亡くなった、としか聞いていない。
しかしこれを見ると・・・」

病、というより何者かに命を狙われていたかのような描写が垣間見られる。

「しかしこれではっきりした。
18年前にアクイラ王家に生まれたのは紛れもなく男児。私ではない“誰か”だ。
そしてその誰かとは・・・」

不安げにこちらを見つめるカルセに目をやる。

「この日記には、私に関する話が一切合切出てこない。名前の断片すらもだ。
私は、どうやら“本物の王子”とすり替えられた、名も知れぬ誰かの子供らしい。
しかし城の者も父上も、私をアクイラの子として育ててくれた。
その背景に、彼らが意図的に王子を入れ替えたという企みはない。入れ替える理由が見当たらないからな。
となると、やはりレムリアが何らかの理由で私とカルセを入れ替えた・・・としか考えられない」

母親だと信じていた人物の、本当の声。
自分を認識していないこの日記は、ジストにとっては少々堪えるもの。
自分は一体どこから来た、誰の子供なのだろうか。

「父上は、今際に言っていた。“レムリアを信じ”・・・と。
そして父上の亡骸に残された魔法の形跡。
恐らく父上はレムリアによって殺され、今際に彼の本性を私に伝えようとしていた。
指輪を守れと仰ったのも、レムリアがそれを狙っていたのに気が付いたからだ。
だがその指輪を私に託したのはレムリア本人。言ってしまえばあの場で奪ってしまえばいいものを・・・」

「まだ正体をバラすわけにはいかなかったのだろう。
お前はナメられていたんだよ、あの賢者に」

アクイラの指輪を手にし、剣を携え、旅立ったあの日。
どうせ途中でのたれ死ぬとでも思われていたのか。



日記を手にし、4人は書斎を後にした。




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