「あ、あれ・・・
メノウさんとコーネル、何してるんだろう。まさか喧嘩・・・?」

「なぁに。男同士、剣で語り合っているのだろう。
私達が水を差す必要はない。
コーネルも、ずいぶん逞しい表情をするようになったというものだ」

刃が白い閃光のように何度も打ち合う。
日が暮れ始めたが、薄暗さの中でも2人の刃は煌めいていた。
窓越しにその光景を見つめるジストとカルセは、目を奪われるように視線を逸らさない。



「コーネルはな、もともと気の弱い温厚な少年だったんだ」

懐かしそうにジストは目を細め、思い出話を紡ぐ。

「私と彼が初めて出会ったのは8年前。
母を亡くした彼は、本当に心細そうだった。
てんで空気の読めない私は、初めて出来た友達というものに浮かれていた。
嫌がるコーネルを無理やり連れて城にイタズラをして、よく怒られていたよ」

――あれは、いつだっただろうか。

「私とコーネル、互いが初めて剣を交えた日。
今の彼がメノウを相手にやっているようなものではない。ほんの、余興だ。
私はそこでコーネルを負かしたんだ。
その時から、彼は私に対して当たりが強くなった。
とはいえ、別に彼は私を嫌っていたわけではないのだろう。
彼の根底には、どこか、私を気にしてくれている心があるような気がして。
挫けそうな時、いつも私に寄り添ってくれていたのは彼だ」

相棒と道が逸れた時、コーネルはただひたすらジストと共にあった。
常に共にある、その信念は簡単なものではないだろう。

「僕はきっと、コーネルに憧れている。
コーネルは、絶対に揺らがない“自分”を持っているから。
僕はただ、“演じる”だけの存在だった。王様というものを、“シェイド”という人を。
そこに“僕”はいない」

「演じる、か」

ふ、と彼女は微笑む。

「私も、君も、“同じ”なのかもしれないな。
人々が理想とする人物の姿を纏う者だ」

“自分”の意志。
それは一体どこにあるのだろう。









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