王都ブランディアは戦場と化していた。
闘技大会で賑わっていた面影はなく、露店の残骸は焼け焦げ、炭化した物資がそこら中に転がっている。
硝煙の香りが鼻腔を突き、こびりついて離れない。城の方角では銃声が絶え間なく響いている。
凄惨な有様に立ち眩みがした。
この王都に足を踏み入れたら最後、無事に出られる保障はどこにもなさそうだった。
それを知ってか知らずか、王都の門から少々離れた位置に数人の影がある事に気が付き、ジスト達はそこへ近づく。
顔を視認できて初めて気が付いたが、どうやら人間ではないらしい。
「君達は一体?」
ジストが声をかける。
かなり長身の女性が1人と、数名の男性が連なる。
各々は弓や棍棒といった武器を携えてはいるが、銃火器は持っていないようだ。
突然話しかけられ困惑したのか、男性たちは顔を見合わせる。
女性はそちらに何か一言、聞き慣れない言葉をかけると、褐色肌に浮かぶ鋭い眼光をこちらへ向けた。
「我々はダークエルフである。
この近くに集落を持つ、独立した集団だ。
此度、この人間の都で醜い争いが起きたと知り、馳せ参じた次第である。
私の名はターフェイ。ダークエルフ達を束ねる長である」
少々無機質で堅苦しいが、流暢に言葉を連ねる彼女はそう紹介してくれた。
「えぇっ、ホンモノ?!
すごい、俺ダークエルフなんて初めて見た!!
めっちゃ美人じゃ~ん♪」
「アンバーさん、自重してください。怪しまれますよボク達」
すでに薄紫の瞳がきつくアンバーを睨んでいる。
冷や汗をかく彼を後ろへ押しやり、ジストがターフェイの前に立つ。
ダークエルフは本当に身長が高い。見上げるような体勢で向かう。
「あー、すまない。紹介が遅れた。
私はジスト。緑の国の王家の者だ。
赤の国の王家に用があったのだが、一体全体、今何が起きているのか、君達は知っているか?」
「ほう。お前、人間の王家か。
ならばちょうど良い。ついて来い。
我々の集落で数人、負傷者を匿っているのだ。
見たところ癒し手もいるようだしな。こちらとて無償で何人も治療できる余裕などないというものよ」
要は手伝えという事なのだろう。
頑張ります、とサフィは密かに呟いた。
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