「とことんクロラ様にハメられているわね」

リシアだ。
さすがのジストも参った顔をしていたのだろう。
宮殿の廊下で出くわした彼女に笑われる。

「ま、まぁ託された以上は善処するつもりだ。
こうなったら目指すは世界平和だ!!」

「ふふ。クロラ様も自分でこれくらい出来る人ならね」

「あまり主人を蔑むな。俺が迷惑を被る」

コーネルもやってきた。

「仕方ないじゃない、事実なんだし。
でも、そうね・・・少し見直したわ。
あの人、カラッポなのかと思っていたらそうでもないみたい」

リシアは目的もなくその辺りをゆっくり歩く。

「教皇になりたくない、なんて言って・・・
先代教皇様が亡くなった途端に、ひっくり返ったみたいにどんどん人を動かすの。
恐れ入ったわ。たぶん、ずっと昔から、彼はこの日が来るのを覚悟していたのね」

くるり、とリシアは振り返る。

「ブランディアに向かうんでしょう?
気をつけなさいね。かなり派手に荒れているらしいから。
特にコーネル、突っ走ってジストを困らせるんじゃないわよ?」

「ふん。お前もせいぜい教皇の妃として余生を堪能する事だな」

リシアはニッコリと笑う。

「青の国のこと、頼んだわよ」

「あぁ」

短い姉弟のやり取り。
それでも、確かな絆が感じられた。





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