ルベラは大剣で応戦する。
手応えのある一撃をアンバーに打ち込んだが、彼が不敵に笑ったままである事に唖然とする。
「何故っ・・・?!」
「あんたのせいで死んだ死体だよ、ここにいるのは。
どうせ覚えちゃいないだろうけど、俺を使い捨てた罪、償ってもらおうか!!」
「死んでたまるものか!!
俺はこの国を支配する!!世界を支配する!!」
叩き斬るような大剣の一撃がアンバーを襲う。
それでも、すぐにその傷が癒え、彼はルベラに素早い矛先を繰り出す。
一撃、二撃、――止まらない。
「ぐうっ・・・!」
「地獄へ落ちろ!!」
ザクッ、と重い一撃がルベラの胸を貫く。
「がっは・・・」
ルベラは崩れ落ちるように倒れた。
「・・・派手にやったなぁ」
メノウは溜息を吐く。
「わかってるんだよ。ただの私怨だって事くらい」
アンバーは振り返る。
暗い琥珀色の瞳が覗いた。
「地獄へ落ちるなら、俺も一緒さ。
ごめんよ、サフィ。嫌なモノを見せちゃったね」
俯くサフィは静かに首を横に振るだけだ。
倒れていたフロウがゆっくりと体を起こす。
「え、れ・・・、うっ・・・ううっ・・・」
まるで小さな子供のように、彼女は涙をこぼしている。
いつか見た高慢な態度とは打って変わった弱々しい姿。
本来の彼女はこうなのかもしれない。
「なんでエレスを殺したの?
フロウには・・・エレスしかいないのに。
エレスがいなかったら、誰も、フロウを愛してくれない」
ぽと、ぽと、と涙の雫が床に落ちる。
「・・・君も、機関の・・・。
レムリアに利用されている、のか」
「イヤ!!キライ!!
れ、れむ、りあ・・・いや・・・!!」
ガタガタと突然彼女は震えだす。
「助けてよぉ・・・エレス・・・いやだよぉ・・・」
異変を察知する。
フロウから再び魔力が溢れ出し始めた。
今度はとんでもない、目で見てすぐわかるほど濃い魔力だ。
紫じみた霧が徐々に視界を奪う。
「な、何をする気だ、君?!」
「みんな、死んじゃえばいいの・・・みんな、ミンナ・・・」
霧が熱を帯びていく。
床に散らばっていた書類が、ぐにゃりと形を歪めて溶けはじめる。
「さすがにコレは俺みたいなゾンビでも直葬レベルじゃない・・・?!」
「に、逃げましょう、今すぐっ!!」
駆け出そうとするが、霧を吸い込んだ体内が燃えるような痛みに襲われる。
「俺はこんなところで溶けて死ぬなど許せんぞ・・・!」
先程の幻術とは比にならない、異常な濃度。
神経を焼き切るが如くジスト達を襲い、逃げたくても足が動かない。
「くっ、私は・・・っ!!」
「フロウ!!」
少女の名を呼ぶ声がこだました。
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