「メノウ、・・・」
「別に姫さんまで手を汚す必要はない。こういうのが傭兵の仕事や」
大量の血を流して倒れるエレスを見下ろし、彼は呟く。
「わ、たしは・・・まだ、死ぬわけには・・・げほっ・・・」
「君の忠義は素晴らしい。なのに、どうして機関に・・・」
「あ、るじ・・・。・・・主・・・?」
エレスはぼんやりと目を開ける。
「あれ・・・僕は・・・一体・・・」
「・・・ん?」
「セレス、と・・・セラ、が・・・待っ・・・」
「誰かの名前か・・・?」
「すみま、せ・・・僕、もう・・・」
ジストは静かに目を閉じる。
「もう喋らない方がいい。傷が開く・・・」
「・・・フロウ、を、おねが・・・」
ふっ、とエレスは意識を失ってしまった。
地図に示された最奥の部屋を目指す。
執務室と書かれたそこが、恐らくはルベラの部屋だろう。
「ここにルベラがいる・・・のだろうか」
「ジスト、ちょっといいかな」
アンバーが声をかけてくる。
「どうした?」
「クロラ皇子はさ、“どう切り抜けるかは託す”って言ってたよね」
「確かに、そう言っていたな」
「じゃあ、・・・ルベラ皇子を始末してもイイって事?」
びくっ、とジストは跳ねる。
「いや、その・・・」
「ジスト。お前もいい加減わかっているのだろう。
・・・言葉だけで解決できるほど世間は甘くない、とな」
「それは・・・」
神妙な面持ちでジストは俯く。
「ルベラ皇子を仕留める最後の一手は俺がいい」
一斉にアンバーに視線が注がれる。
「個人的な恨みだけど。
・・・それでも、俺の命の代償を支払わせたいんだ」
ジストは承諾するよりほかなかった。
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