「メノウ、・・・」

「別に姫さんまで手を汚す必要はない。こういうのが傭兵の仕事や」

大量の血を流して倒れるエレスを見下ろし、彼は呟く。

「わ、たしは・・・まだ、死ぬわけには・・・げほっ・・・」

「君の忠義は素晴らしい。なのに、どうして機関に・・・」

「あ、るじ・・・。・・・主・・・?」

エレスはぼんやりと目を開ける。

「あれ・・・僕は・・・一体・・・」

「・・・ん?」

「セレス、と・・・セラ、が・・・待っ・・・」

「誰かの名前か・・・?」

「すみま、せ・・・僕、もう・・・」

ジストは静かに目を閉じる。

「もう喋らない方がいい。傷が開く・・・」

「・・・フロウ、を、おねが・・・」

ふっ、とエレスは意識を失ってしまった。





地図に示された最奥の部屋を目指す。
執務室と書かれたそこが、恐らくはルベラの部屋だろう。

「ここにルベラがいる・・・のだろうか」

「ジスト、ちょっといいかな」

アンバーが声をかけてくる。

「どうした?」

「クロラ皇子はさ、“どう切り抜けるかは託す”って言ってたよね」

「確かに、そう言っていたな」

「じゃあ、・・・ルベラ皇子を始末してもイイって事?」

びくっ、とジストは跳ねる。

「いや、その・・・」

「ジスト。お前もいい加減わかっているのだろう。
・・・言葉だけで解決できるほど世間は甘くない、とな」

「それは・・・」

神妙な面持ちでジストは俯く。

「ルベラ皇子を仕留める最後の一手は俺がいい」

一斉にアンバーに視線が注がれる。

「個人的な恨みだけど。
・・・それでも、俺の命の代償を支払わせたいんだ」

ジストは承諾するよりほかなかった。





-213-


≪Back | Next≫


[Top]




Copyright (C) Hikaze All Rights Reserved