騒ぎを聞きつけた兵達が十数と押し寄せ、エレスのサポートにまわる。
次々と繰り出される攻撃を受け流し、間髪入れずに襲いくる暗器を弾くので精一杯だ。
徐々にジスト達の消耗が目立ってくる。
「くそっ、埒が明かない・・・!
どうにか数を減らせないのか?!」
「無茶言うなや!
さすがに多すぎや!!」
「貴様それでも傭兵か!!」
「そら理不尽やで、あんさん!」
メノウに守られつつ自身も宝剣を手にするジストは、忙しく視線を泳がせる。
彼女はある事を思い付き、後ろに呼びかけた。
「カイヤ、サポートしてくれ!」
「はい?! 何を?!」
「何かこう・・・速度を上げる的な魔法だ!!」
「も、もう、しょうがないですね!
いきますよ、皆さん!」
カイヤが詠唱し、全員に魔法を放つ。
急に身軽になった。
「よし、メノウ、私の事はいい!! 前に出てくれ!!」
「は?! 姫さん死ぬで?!」
「いいから!! 構わず!! できれば思いっきりだ!!」
「・・・知らんからな!」
体勢を瞬時に切り替え、彼は敵陣へ突っ込む。
いつになく鋭い目でその姿を見ていたジストは、宝剣を構え直した。
「ジストさん、あ、危ないですっ!!」
サフィの制止も聞かず、彼女は前に出る。
ああっ、と思わず手で口を覆うが、すぐにそれが杞憂だったと悟る。
――前線に飛び込むメノウの動きを、ジストが寸分のズレなく再現している。
「な、なんだそれは、ジスト?!」
「ふははは!! 奥の手と言うやつだ!!
遠慮なく暴れてくれ、メノウ!!」
「了解」
メノウの戦闘力がそのまま複製されたかのように、ジストは暴れ回る。
さすがに歴戦の傭兵の腕には警備兵如きでは敵わず、次々に戦闘不能に陥っていく。
「そ、それは幻術・・・!」
思わず圧倒されるエレスだが、首を振って暗器を構え直す。
「私は、退くわけには、いかないのです・・・っ!
何があっても!! たとえ私が死ぬとしても!!」
「姫さん、その魔法少し解除しとって」
「む?! わ、わかった」
動きの複製を止めると、メノウは大剣でエレスに斬りかかる。
「悪いが、ここまでにしとけや」
大剣が真っ直ぐにエレスを貫く。
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