「ん、・・・誰かいる」

カルセは立ち止まる。

「多勢に無勢とはこういう事ですか。
いやはや、ツイてないですね・・・。
まさか貴方がたとは」

壁際から姿を現したのは、黒づくめのエルフ男。――エレスだ。

「やっぱりお前か。
こんなとこで何しとんのや」

「えぇ、もともと“我々”は機関よりここへ派遣された身・・・なのですが、残念ながらルベラ殿の怒りを買いまして。
今の私はルベラ殿の命には逆らえないのです」

「教皇とクロラを襲ったのは君なのか?!」

「はい。ただ、あの小賢しい皇子を仕留められなかったのが痛いですね。
お陰さまで我が主はルベラ殿の人質でございます」

彼が主と表するのは、恐らくは以前傍らにいた少女の事だろう。

「貴方がた。何も言わずに死んでいただけませんか」

「ナメられたものだ。そう易々と死んでたまるか」

コーネルは剣を構える。
やれやれ、とエレスは肩を竦めた。

「さて、私めはルベラ殿の命により、何が何でも貴方がたを始末せねばなりません。
ご覚悟を」

エレスはいつの間にか7本の暗器をチラつかせていた。





真っ先に斬りかかったのはコーネルだ。
宝剣が白い弧を描き、エレスに襲い掛かる。
しかし彼は身軽にそれをかわしてしまうのだった。

「くっ、ちょこまかと・・・!!」

「口程にもない。隙が多いですね!」

シュンッ、と暗器が飛んでくる。
あまりの素早さに避けきれなかったコーネルは腕に切り傷を負った。

「あんさん、動くな!
毒がまわる!!」

「王子、退いて下さいっ!ボクが解毒します!」

「そんな余裕がありますかね!」

また暗器が飛んでくる。
狙われたのは・・・――

「カイヤ、危ない!!」

咄嗟にアンバーがカイヤの前に飛び込む。
彼の胸に暗器が刺さるが、彼に傷も毒も効かない。

「そう何度も庇えないよ?
いくらゾンビでも、大前提はサフィの魔力なんだから・・・!」

「次はこちらです!」

「姫さん!!」

メノウの大剣がジストに向けられた暗器を弾き落とす。

「ぐぐ、厄介な・・・!!
迂闊に近寄れないではないか!!」

再び暗器が放たれる。
うわあ、と驚いてよろめいたカルセの目の前に、先程の使い魔の小鳥が割り込む。
暗器が刺さった小鳥はピィ、と鳴いて地面に落ち、消えてしまった。

「おや、貴方様は・・・」

エレスはカルセを見て何かに気付く。

「シェイド様でございますか?」

その名を聞いてはっとする。

「君は僕を知っている・・・?」

「これはクライン様のお達し・・・?
いや、まさか・・・。
シェイド様、この者達とは一体どういう・・・」

「と、友達・・・。仲間。僕は他に何も知らない」

「なんと。我らが王よ・・・」

「“王”?」

どういう事だ、と尋ねる前にエレスは更に追加の暗器を携える。

「貴方様がここにいる。私の前に立つ。という事は我々を“裏切った”。
再開としましょう。処分します」





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