「エレスはぁ、フロウのコトがぁ、スキ、キライ、スキ、キライ・・・」
「私めの心にフロウ様への愛以外のものがあると?」
「だ~よねぇ~♪
これもうい~らない」
紫と青の瞳を持つ少女は、持っていた一輪の花を投げ捨てる。
「でもでもぉ、最近エレスが構ってくれなぁい。
おシゴトばっかり。フロウつまんなぁい」
「あぁ、あぁ、それはそれは誠に申し訳ございません!
ただちにこの書類を仕上げます」
「それってなぁに?」
「下の兵達が提出してきた書類でございます。
大半が火器使用許可か経費請求ですが」
「それってエレスがやる必要なくなぁい?」
「いやはや、私めも焦っているのです。
フロウ様の御身がかかっていますから。
少しでも恩赦をいただかねば」
「むぅ。それはそうだけどぅ・・・。
でもでも、別にフロウはヘーキだよ?
エレスがいてくれれば」
「いけません、フロウ様。
あの野獣にフロウ様の御身を差し出すような真似だけは断じてできません」
「誰が野獣だって? えぇ?」
長身で緑髪の男が部屋に入ってきた。
「楽しそうにしているとこ悪いが、ネズミが入ったらしい。
ぶっ殺してこい」
「おや。この堅牢な要塞に侵入するとは、なかなかやり手でございますね」
「すべこべ言わずにさっさとしろ。
クロラを取りこぼした貴様らだ。本来なら今頃首晒してるところだぜ」
「・・・承知しました」
「えぇ~、エレス行っちゃうの?」
「申し訳ございません、命令には逆らえぬゆえ・・・」
「わかっているならいい。
小娘、今日はどうしてくれようか・・・」
「むぅ・・・」
ギリ、とエレスは唇を噛む。
「何か言いたいか、貴様?」
「いえ」
「たかがネズミと侮るなよ。
しくじったらこいつの命はないと思え」
「・・・は」
「エレスぅ~、また後でねぇ?」
「・・・どうかご無事で」
つかつかとエレスは部屋を立ち去る。
「行ったな。
よし、小娘。今日はそうだな・・・何か踊れ。
下手なモン見せたら殴る」
「むぅぅぅ・・・」
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