賢者たちに別れを告げ、一行はアルマツィアの中心、聖都までやってきた。
以前ここを訪れた時のような物々しい雰囲気は薄らぎ、街中が祝賀ムードでいっぱいだ。
鼓笛隊が聖都の中を練り歩き、人々が歓声を上げて盛り上げている。
「すっご!
俺も長い事アルマツィアにいたけど、こんなに盛り上がってるのは初めて見たなぁ」
アンバーは楽しそうに周囲を見渡している。
「おーい!」
どこからか聞き覚えのある呼び声がした。
押し寄せる観光客の間からラリマーが手を振っていた。
「メノウ~!! やーっと見つけた!!
んもう、どんだけ心配したと思ってんのよ!!
ま、簡単にくたばるような男じゃないとは思ってたけど!」
「あぁ、悪い悪い」
「あらハイネちゃん!
大きくなったわねぇ♪」
「え、うん・・・?」
メノウと手を繋いでいるハイネは慌てる。
「情操教育に悪いわ。話しかけんなや」
「まっ、失礼しちゃう!
聞いてよナナちゃん、メノウがね・・・」
「まーた始まった。おいメノウ、さっさとそいつ抱いてやれよ」
少々低めの女性の声だ。
そこに目をやると、つば広帽を被った目付きの悪い、栗毛色の長髪の女がいる。
「お前、セブンス・・・」
「よう、達者だったか、“赤豹”。
しばらく見ねぇと思ったらいろいろやらかしてたんだって?
そこの奴が王子って噂の野郎か」
女性はジストを指差す。
「メノウ、彼女は?」
「セブンス。通称“虹獅子”、あるいは“7(ナナ)”。傭兵界隈じゃ有名な奴の1人や。白の国のギルド所属。
ガサツだが銃の腕はいい。ついでに悪運も異常に強い」
メノウがそう言うくらいなのだからかなりの実力者なのだろう。
よろしく、とジストはセブンスに笑いかけるが、当の彼女は咥えていた棒付きのキャンディを弄びながら鼻で笑う。
「見るからに世慣れしてなさそうな青臭いガキだぜ。
お人好しのメノウにお似合いだな」
「悪く思うな。あいつなりの“ヨロシク”や」
「てめっ・・・」
チッ、と舌打ちする彼女。道端の木箱の上で胡坐をかく。
「メノウも顔負けなくらいの風来坊ちゃんよ。会えて幸運ね、あんた達」
「その風来坊がこんなとこで何してんのや」
「クソ教皇の息子が結婚するって聞いて冷やかしに来たんだよ。
あの引きこもり皇子に嫁がされる可哀想な花嫁の顔を一目見てやろうってな」
「おい」
コーネルがセブンスを睨む。
「んだぁ? そのガキは」
「あぁ、紹介遅れたな。
その“可哀想な花嫁”の弟やわ、このあんさんは」
「さ、先に言えっ!」
動揺するセブンスを見て、ラリマーはケタケタ笑っている。
「あら、そういえば金髪のイケメン君はいないの?」
「え? あいつならそこに・・・」
振り返ると、サフィの隣からいつの間にかアンバーの姿が消えている。
「どこ行ったんや、あいつ」
「さっき、“ちょっと買い物”って言ってどっか行っちゃったよ」
カルセはそう、報告する。
「ま、あの人のコトですから。
子供みたいにテンション上がって迷子にでもなっちゃったんじゃないですか」
「この感じ・・・そう遠くには行っていないと思います。
私、探してきますね」
「私も行くぞ、サフィ!」
ジストとサフィは2人で人混みの中に消えた。
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