煙草を咥えるグレンのもとに“彼”がやってきたのは、それから数時間も経たない頃だ。
「お前は・・・」
「え、と・・・カルセドニー、です。今のところは・・・」
カルセは頭を下げた。
「おいおい、俺に何の用だってんだ?
クク、女の口説き方でも教わりに来たのか」
「えぇと・・・どちらかと言うと、精霊の口説き方、だと思う・・・」
「は?」
ポカンと開いたグレンの口から白い煙が漏れる。
「僕に召喚術を教えてほしいんだ」
「召喚術ゥ?
確かに俺はそいつの賢者だが、教えるのはガラじゃねぇんだ」
「あ、あの、触りだけでもいいから・・・。
ううん、僕にそれが使えるかどうか、教えてくれるだけでもいい」
「なんだってんだ?
まぁ、それくらいならいいけどよ」
どれどれ、とグレンはカルセに近寄る。
「ふうん・・・確かに、お前には召喚術が使えそうな魔力があるな。
特にその右目。ちょっと見せてみろ」
カルセは一瞬躊躇う。彼の右目は常に髪で隠されている。
何故躊躇うのかはわからないが、背に腹はかえられないとばかりに思い切って瞳を晒す。
「・・・おいおい、マジもんか、こりゃ?」
カルセの右目は澄んだ黄金色をしていた。
「おいクーちゃんよ」
「今度は何」
「ちょっとツラ貸せ」
部屋にやってくるなり、グレンはクレイズの顔を引き寄せる。
「ちょっと・・・いくらなんでも節操なさすぎ・・・
僕そんな趣味じゃないんだけど・・・」
「違ぇから!!
・・・お前、レムになんかされたか?」
「心当たりがありすぎて、一体どれの事だか・・・」
「あのカルセドニーって奴。
・・・お前のその目と同じだ」
あぁ、とクレイズはようやく納得したように頷く。
「“あれ”の事か。
さすがにしんどかったよね。魔力の一部を引きちぎられるっていうのは・・・。
レムに盗られた分の魔力があれば、こんなところじゃなくて、カレイドヴルフまで飛べたかもね・・・」
「おいおい・・・あいつそんな・・・」
「まぁまぁ・・・僕の魔力を分け与えられた子がいたなら、贔屓してあげてよ。
友達なんでしょ、僕と君」
「狂ってやがるぜ。
あいつも・・・お前もな」
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