「ちょっとグレンさん! お静かにお願いします!
博士は今療養中で・・・」
「ドンパチやらかしたんだろ?
見りゃわかる」
ズカズカと部屋に入り込むグレンは、近くのソファに豪快に座る。
「何しにきたの、グレン・・・」
「お前の死に顔を拝みに来たつもりだったが死んでなかったから空振りだ。
あとこれを届けに来た。ほらよ、嬢ちゃん。開けてみろ」
カイヤはグレンから封筒を2つ受け取る。
宛名はカイヤとクレイズ、裏返したところに書かれた送り主は・・・――
「アンリ先生!!」
パッ、とカイヤは笑顔になる。
「博士、アンリ先生から手紙です!!
よ、よかったぁ、無事だったんだ!!」
涙ぐむカイヤを見るクレイズは微笑む。
グレンもにんまりと、“してやったり”の顔だ。
「ローディのせいであんなに大怪我して・・・もう助からないかと・・・」
クレイズも安堵したように手紙を見つめる。
「しばらくは絶対安静って言われてたが、少なくとも今のクーよりかは元気だったぜ。安心しな」
「グレンさん、わざわざありがとうございます!
こっちも博士が無事だったって返事書かなきゃ。
もちろんグレンさんが届けてくれますよね?」
「ったく、調子いいぜ。俺は運び屋じゃねぇんだぞ」
彼はブツブツと文句を言いつつも承諾する。
「で?
お前らこの後どうすんだ?」
「決まってるじゃないですか。レムリアを追うんです!」
グレンはポカンと口を半開きにする。
「あ? レムがどうしたってんだ」
「グレンさん、何も知らないんですか? 同じ三賢者なのに?
あの人のせいで博士は酷い目に合ったんです!
これはもう恨みを晴らしに行くしかないじゃないですか!」
「正直、もうカイヤ君にはレムリアに関わってほしくないけど・・・
止めても、きっと無駄なんだろうね・・・」
アンリからの手紙に目を落としながらもクレイズは苦笑いだ。
「博士がレムリアを追うのならばボクだって!」
「いいや、僕は一度カレイドヴルフに戻るよ」
意外な言葉にカイヤは驚く。
「グレン、君は僕を連れ戻しに来たんだろう?」
「クク、敵わねえや。そういうこった」
真っ黒なサングラスの向こうで眼光が煌めく。
「ほら、街中ドンチャン騒ぎだろ?
それもこれも、カレイドヴルフの王女がアルマツィアに嫁ぐからだ。
んで、その護衛だかなんだかで、今のカレイドヴルフは随分と守りが薄い。
このキナ臭ぇ世の中で無防備な王都なんざ、国家転覆モンだ。
そこで三賢者の俺達が、出払った王国騎士団の代わりに召集されたってワケ。
嬢ちゃんはどうする? パパと帰るか?」
「そんなあからさまに煽らないでくださいよ。ムカつくなぁ。
ボクは姫様達と行きます。博士としても、自由に動ける駒がいた方が何かと助かるでしょ?」
「よく言うよ・・・」
それでも、クレイズは微笑んで頷いた。
「せっかくの機会だ。広い世界を見ておいで。
怪我しないように気を付けるんだよ。こっちの事は心配しないでいいから」
「ほ~、クーもようやく子離れか?
過保護すぎんだよな、お前は」
「可愛い子にはなんとやら、ってね。
どうやらカイヤ君は僕と違ってアウトドア派みたいだ」
カイヤは照れくさそうに笑う。
「手紙書きます。
ちゃんと返事くださいね、博士!」
「わかった。楽しみにしてる」
「うっし、そんじゃクーがもう少しまともに動けるようになったら出発すんぞ。
さっさと治せよ、クハハ!」
「やっぱり慣れない魔法は使うものじゃないね・・・。
グレン、君はすごいよ。転移魔法なんて、あんな負担の大きい魔法をホイホイ使えるなんて・・・」
「俺だって一端の術士だぜぇ。見直しただろ?」
「はいはい・・・」
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