宿に戻ったジストは、自室のテーブルにドッサリと荷物を置く。

「ふう。久しぶりに買い物が捗ったな!
少々買いすぎたか」

ふんふん、と鼻歌交じりに荷物を整理していると、扉がノックされた。

「入ってくれ」

「姫さん、ワイや」

「おお、メノウか」

カチャ、と扉が開き、メノウが顔を出した。

「・・・なんや、その荷物」

「いやはや、コーネルに励まされたら元気モリモリになってしまってな!!
つい買いすぎてしまった・・・。
見てくれ、フフ、コーネルが指輪を買ってくれたのだ。ま、オモチャだがな!」

「はは~、先越されたわ」

後ろ手に扉を閉めたメノウは、持っていた箱をジストに差し出す。

「これは?」

「今までの詫び。ハイネと一緒に選んできた」

「プレゼントか?!
まさか君から貰うとは・・・。
開けてみてもいいだろうか?」

「あぁ。これは盲点やと思うで」

綺麗に梱包された箱を丁寧に開封する。
ジストが箱の蓋を開けると、シルクのリボンが現れた。

「なんと!」

「ずっと前、ワイが怪我した時に包帯代わりにくれたやろ。
あれから新しいのを買ってるようにも見えんかったし、これならってな」

「ありがとう!!とても嬉しい!!
そうだな、そう言えばリボンは新調するのを忘れていた。
有難く使わせてもらうとしよう」

すぐにジストはそのリボンを胸に結ぶ。

「どうだ、似合うか?」

「あぁ。ハイネのセンスも侮れんな」

「はは! いい娘を持つ父だな、君は!」

スッ、とジストは手を差し出す。

「私はもう王子でも王女でもないかもしれない。
でも君は私に命を預けてくれると言ってくれた。
なら、私も君の人生というものに報いたい。
一緒に来てくれるか、メノウ?」

「あぁ、もちろん」

彼も手を差し出す。
いつかのあの時交わした握手。
その契りを確たるものにする繋がりが再び。

「もう一度私の名を呼んでくれないか?」

「くくっ、照れくさいから嫌やわ」


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