「すごいすごーい!! お祭りやん!!」

ハイネは楽しそうに駆け回る。

「こーら、走るな。危ないで」

父親の手をひいて、ハイネはあちこちの露店に立ち寄る。

「うち、ちょっと怖かったねんけど、おとんと外国のお祭り来れるなんて夢みたいや!
うれしいわぁ!」

「すまんかったな。怪我なくてよかった」

「ヘーキヘーキ!!
うちはおとんのムスメやで?
カンタンにヘコたれんのや!!」

太陽のような笑顔。まさにその表現がハイネには似合う。

「ね、買い物って何買うの?」

「あぁ、詫びの品やな」

「ワビ?」

「ハイネも女やろ。おとんに教えてや。
どんなんやったら喜ぶかってな」

「あ! ヒメサマにプレゼント?!
なんや~、おとん、ヒメサマ好きなん? ん??」

「はっはっは。おとんかてそう若くないわ」

親子連れ立ち、一件の店に入る。

「わぁ、オトナの洋服たくさんあるわ!
あ、これかわいい!! うちもはよ大きくなってこんなん着て歩きたいわあ」

「お前が着たいのは学校の制服やろ?」

「あぁ、うん、もうえぇねん」

えっ、とメノウは振り返る。

「だっておとん、うちが学校行きたいから仕事してんのやろ?
でもうち、おとんがアブナイくらいなら、別に行かなくてもえぇわ。
じじも勉強教えてくれるしな」

「・・・誰からそれ聞いた?」

「へ? カイヤお姉ちゃんやけど」

「あいつ」

ちっ、と舌を鳴らすと、メノウはニヤリと笑う。

「いい事聞いたわ。カイヤに責任とってもらお。
クレイズ助けた貸しもあるしな」

「へ?」

「あぁ、気にすんな。オトナの話や」

何か閃いたとばかりにニヤニヤする父親を訝しむが、今のハイネには理解が追いつかないだろう。

「よーし、買った買った。
ほら、ハイネにもなんか買ってやるわ。好きに選べ」

「えー、ほんま?!
やったー!! じゃあねー、えーっと・・・」

現実味のない、心穏やかな時間。
自分はそれを甘んじて受け入れていいものかと心の奥底にはあるが、今は気にしないように、彼は娘から目を逸らさない事に努める。



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