「博士はどこですか?! 無事なんでしょうね?!」

今にも噛みつきそうなカイヤをカルセが慌てて止めている。

「そおねぇ・・・。
無事、といえば無事なのかしら。
生か死か、って意味だったらね」

銃口がローディの唇に触れる。
艶やかな色が黒い身体をなぞると、ゆっくりとそれをカイヤに突き付ける。

「こんなにたくさん子猫ちゃんを拾ってきて・・・
一体どういうつもりなのかしら、ガーネット?」

「うるせぇ、クソビッチ女!!」

ドカッ、とガーネットがローディに体当たりする。

「ハイネ、さぁこっちへ来るんだ!!
君のお父さんを助けに行く!!」

「え、おとんを?!」

ジストが差し出した手をハイネがとろうとした瞬間・・・――

「ハイネも・・・にげちゃぅ?
て、と、あし・・・ぷちって、しないとだめ・・・?」

凄まじい魔力の塊のような少女――フェナは無表情でハイネを見つめる。

「ひっ・・・!」

「にげちゃうんだね?!」

「えぇい、ではその子も一緒に!!」

ジストはハイネを片腕に引き寄せ、フェナに手を伸ばした。

「いや!!! いや――――!!!」

フェナが泣き叫ぶ。
それはまるで幼子の癇癪のよう、――だがその叫びには大人でも吹き飛ばされるほどの魔力が含まれていた。

「「「うわああああ!!!!」」」

その場にいた全員が吹き飛ばされ、壁や天井にぶつかって倒れ込んだ。

「何事だ!」

今度はドタドタと大きな足音。
駆けつけてくるなり、その足音の主である巨漢は強風を受けるが如く思わず腕を上げ、状況を確認した。

「ローディ、ガーネット、一体フェナに何があったというのだ?!」

「ヒスってんだよ!! どうにかしろ、ウバロのおっさん!! 全員ミンチにされちまう!!」

「ええい、待て待て、落ち着くんだフェナ、これ以上暴走したら身体が・・・!
ローディ、手伝ってくれ!!」

「もう、なんなのよ!!
ダーリンに知られたらどうするのよ!!」

ウバロと呼ばれた男とローディはフェナを宥めようと必死に魔法を詠唱している。
床に転がっていたジストは、ぶつけた頭を撫でつつハイネの無事を確認した。

その時、ちょんちょんと誰かの指が触れる。

「こっちじゃ、己ら」

いつの間にかそこにいた占い師のような風貌の少女がそっと囁く。

「あ?! エマ、なんでここに・・・」

「しーっ!! 今のうちじゃ!!」

フェナを宥めるどさくさに紛れ、ジスト達は少女――エマイユに連れられてその場を離れる。


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