室内は薄暗い。
長い廊下が真っ直ぐ続いており、いくつもの扉が規則的に並んでいる。
扉の脇にはそれぞれの部屋の役割が書かれているようだが、どれもこれも普段は使わないような難しい言葉で示されていた。
「君。ここにハイネがいるのは確実か?」
「あぁ、いるぜ。今からそこへ案内する。
で、そこのチビすけが探している“クレイズ”って奴も、この施設にいるはずだ」
「ち、チビすけってなんですか!!」
「声が大きいよ、カイヤ・・・」
チッチッチ、とガーネットは舌を鳴らす。
「ハイネとかいう娘の親父は地下だ。どの部屋かまではわかんねぇが、どっかしらの部屋にブチ込まれてるはずだぜ」
「メノウは捕まっているのか・・・?!
いけない、すぐにでも助け出さないと・・・」
「まぁまぁ、落ち着けって。
ここの責任者はアタシの相棒が身を挺して足止めしてる。少しばかり猶予はあるはずだぜ。
けどな、できるだけ静かにしろよ。“所長”に見つかったらソッコーで全員オーバーキルだぜぇ・・・?」
所長。
にわかには信じ難いが、きっとその肩書きが示すのはレムリアなのだろう。
ミストルテインが陥落したあの日からもう幾月か、ようやく彼と相見える時がきた。
「ここがチビっ子のいるところだ。
ただし気をつけろよ。ある意味じゃ、所長よりやべーのが一緒にいるからよ・・・」
ガーネットはある一室の前で立ち止まり、ガチャリと扉を開けた。
「あれ・・・
たしかおとんと一緒にいた・・・」
ハイネだ。
積み木を片手に床に座っている。無事だったようだ。
ほっと胸を撫で下ろすが、ハイネの近くに同じように座っている少女が空虚な瞳を向けてきた。
「だれ・・・ハイネ、このひと、たち・・・」
「あー、えーっと、なんだろ・・・。トモダチ?・・・かな」
「トモダチ」
少女は復唱すると、スッと立ち上がった。
「だめ。ハイネはフェナのトモダチ。だから・・・とっちゃだめ!」
グワッ!と念力のようなものが押し寄せる。
思わず後ずさりしてしまう迫力に、一行はおろかガーネットも圧倒されたようだ。
「待ーて待て待て待て!! ストップ、フェナ!!
そんなにビッグな魔力使ったら・・・」
「ちょっと、何してるのよ!!」
コツコツコツ、と甲高い足音が近づいてくる。
「あーあ・・・」
肩を竦めるガーネット、怯む一行。
カイヤが目を見張った。
「え、ちょ、ローディせんせ・・・」
「あらぁ、カイヤちゃんじゃないの。
どうしたの? ・・・私が恋しくなっちゃった?」
ウフフ、とローディは黒い銃を懐から露わにする。
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