「これっ、ガーネット。
野蛮なチンピラ風情で妾を呼び出すとは何用じゃ?
せっかくの非番じゃというのに!」

占いの水晶玉を片手にする少女――エマイユは、休暇中に呼び出された事を不満げに顔をしかめる。

「テメェ、誰に向かってその口をオープンしてる?!
そのヘナチョコなボールで占え」

「ボールではない!! す・い・しょ・う!! 常日頃から水晶じゃと申しておろうに!!
フン、妾のすンばらしい占いをいつもバカにしおる貴様が何を占えと申すか?」

「今日のアタシの運勢だよ!! ラッキー? アンラッキー?!」

「なんじゃあ?
ガラにもなくツキを気にするとは・・・。
というかそんなくだらない事に妾を呼び出すなっ!!」

「どっちだ?」

ガーネットの気圧すような気迫にエマイユは怯み、口を尖らせて水晶を覗き込む。

「仕方ないのう・・・どれどれ・・・。
・・・うむう?! なんじゃ、死神の陰が見えるぞ!!」

「ハッハーァ!!
聞かなきゃよかったぜ!! クソ食らえだ!!」

「変な奴じゃのう・・・。いや、元から変人の申し子のようじゃが・・・。
いつもは妾の占いなぞ聞く耳も持たぬというのに、信じるのか?」

「少なくとも、これでアタシがシッポ巻いてランナウェイなんてバカはしねーって事が保障された。
ハッピーエンドか、バッドエンドか、そのどっちかしかねぇ!!
エマ、テメェの占いは十中八九外れるが一割は当たる。
今夜はどっちに転ぶか楽しみじゃねーか、ヒャッハー!!」

「だから・・・。お主はもう少々まともにコミュニケーションをとれぬのか・・・。
妾には何を言っておるのかさっぱりじゃぞ」

「あー、気にすんな。
あとは・・・そうだな」

ぬっ、とエマイユに顔を近づけたガーネットはにんまりと笑う。

「誰になんと言われようが、テメェはアタシが今日何してたか一切トーキングすんな。
自分の命が惜しけりゃ、な!!」

「むむむ・・・?
お主とて今日は非番・・・」

「おーい、姉御~」

向こうから長身の男――レイクが駆けてくる。

「っだー!! 大声出すんじゃねぇよクソ忍者!!」

「えぇ~?! そりゃあんまりですぜ姉御」

「レイクまでなんじゃ?
2人で何を企んでおる?」

レイクは自分のボサボサのクセ毛を撫でる。

「いんやー、あっしも何がなんだか。
ただ“夜になったら副所長をどうにか足止めしろ”と・・・」

ガーネットの鉄拳がレイクのみぞおちにえぐり込む。

「ファック!!!! 余計なトークすんじゃねー!!
テメェのダラしねぇ口をせき止めんぞコラ!!!」

「ひ、ひでぇでやんす・・・。
あっし、副所長の今夜の予定に俺との密談の予定ぶち込むの苦労したんすよ?!
土下座だってしたし!!」

「ミツダン?
妾を差し置いて、作戦会議でもするというのか?」

「時間稼ぎだ、時間稼ぎ。
このタスクはちぃーっとばかしエマにはシゲキが強いからな、オトナのアタシとレイクで片づける」

「はぁぁ?!妾が童だと馬鹿にしておるのか?!」

「ヘタこいたらデッドエンドだ。
それでもやるか? おチビちゃん?」

エマイユはぐっと拳を握る。

「さーて、レイク。次だ次。いくぞ!!ゴーゴー!!」

「ちと休憩したいでやんす・・・」

騒がしく去っていく2人。
その背中を見送るエマイユは地団駄を踏んだ。

「きえぇぇい!! 見ておれ!!
何事かは知らぬが妾とて意地があるのじゃ!!」


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