「2人共大丈夫だった・・・?」

カルセが部屋で迎える。
そうしてから、もう1人増えている事に気が付いた。

「お客さん?」

「知らん。余計な事をしたらすぐに首を撥ねてやる」

「フン、かわいげナッシングなプリンスな?」

ガーネットはすぐ傍のソファにどっしりと座り込んだ。




明るい部屋の中で改めて彼女を見れば、思いの外華奢で色白、繊細そうな雰囲気を持つ。
その姿は、誰かに似ているような・・・――

「サファイアはどこだ?」

面影の正体を突き止めるより先に、その人物の名がガーネットの口から出る。
カイヤは首を横に振った。

「サフィはいませんよ。
なんというか、まぁ、ここにいる王子が余計な事をしたせいで仲間割れ真っ最中です」

「おい小娘、いい加減・・・――」

「チッ。行き違いか」

ガーネットは足を組んでふんぞり返った。

「貴様は何者だ?
あの聖女を付け狙っているようだが」

「アタシはあいつのシスター。姉貴だ」

しん、と静まり返る。

「え、今、なんて」

「ソゥ!!!
アタシは可愛い妹を探してんだ!!!
バーット!!!あいつはアタシから逃げちまう」

「そりゃ逃げたくもなるでしょう、アナタ怪しすぎますもん・・・」

コーネルがカイヤを肘で小突く。
余計な一言を牽制したいらしい。

「やっと見つけたってのに、ゲットできねーんじゃ意味ナッシングね。
骨折り損ってか?
ここにいると思ったってのに」

「・・・おい、貴様。
俺はあの聖女の事はよく知らないが、少なくともアルマツィアで貴様らを見た時の聖女は怯えているだけだった。
もし貴様が本当にあの女の姉であるならば、違和感がある」

「これはアタシのシンキング。
・・・あいつはメイビー、アタシを忘れてるね。
ホワーイ? そこまでは知らない」

「ますます胡散臭いですね・・・。
まぁでも、王子はアナタのおかげで助かりましたから、感謝はしますよ」

「いや待て。
貴様、あのホムンクルスと顔見知りのようだったな」

「アハーン?
そりゃ同じ釜のフード食ってるからな?」

「そ、それって・・・」

「テメェらもわかっててカムヒア?
アタシもあのロコ坊も、“機関”のエージェントよ」

「機関!!」

ガタッ、とコーネルとカイヤが同時に反応する。
少し離れたところでジストに寄り添っているカルセは首を傾げるだけだ。

「おい!!
もしや貴様、傭兵の差し金か?!」

「ハァ?傭兵?
誰のこっちゃ」

「メノウって人です。
傭兵界隈ではえらく有名な人らしいんですけど」

「アー・・・ハァーン・・・
ガキなら見かけたな」

「ガキ?」

「うちのオーリスって奴が、あー、なんだっけ? オアシス?からチビを誘拐してきたんだよ」

「それって・・・!!」

ハイネの事だ。間違いない。
疑いようもない。ハイネが人質にされたというのであれば、メノウのあの行動も納得がいく。

「あの傭兵は今機関にいるのか?
どうなんだ、教えろ!!!」

コーネルがガーネットに掴みかかる。

「バイオレンスなボーイはウケないぜ、プリンス。
・・・アタシは本人を見ちゃいないが、あのチビが機関にいるんだからそこへ向かったんじゃねーの」

「くっ・・・!!
おのれ、殺しに行ってやる・・・!!」

「ちょ、ちょっと待ってください王子。鵜呑みにするのは早いです。
ガーネットさんがボクらを騙そうとしているのかも・・・」

「アタシは別に機関もチビも知ったこっちゃない。
アタシが興味あるのはサファイアだけだ」

ガーネットはニヤリと口元を歪める。

「取引って奴をしようぜ、プリンス」

「なんだと?」

「アタシがテメェらを機関の施設に入れてやるよ。
その代わり、サファイアをアタシに寄越しな」

「それってつまり・・・サフィを代償に、って事ですか・・・?!」

「なぁに、まさかキルしたりはしないさ。
アタシはサファイアと生き別れてからずっと、あいつを探してた。
あいつともう一度会えればそれで満足だ。
どうだ、美味しい話だろ?」

「そんなっ!!
サフィが何されるかわからないのに・・・――」

「いいだろう。貴様の望み通りにしてやる」

「お、王子?!」

コーネルはガーネットに詰め寄る。

「小娘は放っておけ。俺が1人で行ってあの傭兵を始末してやる。
さぁ、貴様の都合を聞こうか」

「ククッ。物分かりがよくて助かるぜ、プリンス」

ガーネットは窓の向こうの空を指差す。

「次の新月だ。月のない夜にまた会おう。
機関の施設近くまで来な。アタシがキーを開けてやる」

「交渉成立だ」

「嫌いじゃないぜ、プリンス。その動きたくてウズウズしてるアイはな」

ガーネットは立ち上がり、さっさと扉の前まで移動する。

「アディオス、アミーゴ」

パタン、と扉が閉まった。





「お、王子・・・!!
冷静になってください!!
サフィがもし危ない目に合ったら・・・」

「俺はジスト以外がどうなろうと知った事じゃない。
俺を止めたければ俺を殺す事だな、小娘」

つかつかと彼は寝室へ消えてしまった。


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