深夜、人知れず武器を打ち付け合う音が響く。
否、周辺の者は気付いているが息をひそめているようだ。
このダインスレフでは、深夜の戦闘は日常茶飯事である。
巻き込まれる事に怯え、不気味なほど静まり返っている。
「はぁ、はぁ・・・。くっ、埒が明かない・・・!!」
「いいんだよ、降参しても。
僕がラクチンになるだけだから♪」
このホムンクルス、さすがは人工物といったところか、体力らしい体力はないようだ。
息切れはおろか、そもそも呼吸さえ必要としていないように見える。
コーネルが何度も剣を掠めたはずが、ロコの肌についた傷は瞬時に癒えてしまう。
キンッ!と鎌が刃を弾く音がすると、いよいよコーネルは押しのけられて後退した。
「これで終わりだよ!!」
「王子っ!!」
振り下ろされた鎌がコーネルの胸を貫く・・・――――
「しゃらくせぇっ!!!」
寸前、ギーン!!と鈍い刃の音が響く。
倒れ込んでいたコーネルが顔を上げると、黒い後ろ姿があった。
今宵の空のような漆黒の大剣が宙を舞い、ロコを弾き飛ばす。
「な、なんだ・・・?!」
「“Prince Wind”ってのはテメェの事かァ、おい!!」
黒い後ろ姿は振り返る。
白銀の髪が風になびき、深い紅の瞳がコーネルを見下ろす。
「き、貴様は確か・・・!!」
「オラァ!!アルマツィアじゃよくもアタシらに冷水ブチ撒けてくれやがったなァ?!
アタシはテメェをキルしに来た!!
ゴーホーム!!ロコ!!」
鎌を持ったままぽかんとしていたロコは、にんまりと笑った。
「なぁんだ。ガーネットもそいつを狙ってたの。
いいよ、じゃあ譲ってあげる。
僕、お腹空いちゃった!」
じゃあね、とロコはあっさり踵を返してしまった。
「きっ、貴様っ・・・!!」
しっ、と黒衣の人物――ガーネットは指を唇に当てる。
「シャラップ。
いいか、とりあえずアタシをテメェらの宿に案内しな」
「い、いきなり現れて何なんですかアナタっ!!」
「死にたくなきゃアタシに従うんだな」
ふざけた口調だが、その眼差しは鋭い。
コーネルとカイヤは周囲を警戒しつつ、彼女を部屋へ招き入れた。
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