相変わらず曇天だ。
夜明けの薄暗い道を、ダインスレフ方面へ歩いていく。

ついにレムリアとの対面が現実的になり、ジストは勇み足で一行より一歩前を行く。
それが不幸と転じるのは、この後すぐの事だった・・・――





ジストが勝手に進んでいく後ろにメノウ、そして彼の隣にコーネルがいる。
そのコーネルが、ずっと睨みを利かせているのだ。
ぶらぶらと後ろから歩いてきたアンバーが、コーネルの後ろからチラチラと彼の様子を窺う。

「王子、どうしたの?
寝不足?」

「煩い。貴様は黙っていろ」

「ちょっと・・・。
王子ってば、そうカリカリしないでよ。
はぁ、曇り空ってやだねぇ。
気分まで落ち込んでくるよ」

「アンバーさんは気が緩みすぎじゃないですか?
もうすぐダインスレフなんですよ?
ボクだって、神経が逆立っているような・・・――」


急に、風が冷たくなった気がした。





パン!!


銃声が響いた。


時の流れが遅く、遅く、引き伸ばされる。



アンバーが音の出所を見ると、メノウを突き飛ばすコーネルが目に映る。
ゆっくり、ゆっくり、2人は重力の流れに従う。

メノウの手から投げ出される銃、それが地面に叩きつけられたところで、魔法が解けたように、時間が分相応に流れる。
ドサ、と何かが倒れる音がした。


「ジスト!!!!」


弾けたように立ち上がったコーネルが、前へ駆け出す。
滑り込むように、彼は、倒れたジストの体を抱き起こす。
立ち尽くすカイヤは思わず鞄を落とした。

「え、ちょっと、メノウさ・・・」

「ジスト!! ジスト!!
しっかりしろ!! おい!!!」

叫ぶコーネルの手元に赤い血が伝う。
ドクン、と脈打つような一瞬の後、血が池のように地面に広がった。

「い、いやああああ???!!!
ジストさん、ジストさんっっ!!!!」

「ジスト、ジスト・・・!!」

サフィが泣き叫んで彼女に駆け寄り、カルセはフラフラとその後を追う。
さっきまで意気揚々と振られていたジストの腕が、力を失って地面に投げ出される。

「な、なんてことしてんの、メノウさん??!!」

突き飛ばされて地面に倒れていたメノウは、ゆらりと立ち上がる。

「メノウさ・・・」

「あぁ、もういい。
これでいい、
・・・これで・・・」

「ちょっと!!!」

アンバーの制止も受け流し、メノウはゆらゆらと歩き出す。

「貴様ァァァ!!!
よくもジストを!!! 殺してやる!!!!!!」

コーネルの叫びにも反応はない。
メノウはいつの間にか倒れるジストを追い越し、そのまま立ち去ってしまった。


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